シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


だからこそ、それを打開すべく俺は此処に来た。


破壊から再生されるものこそが、俺の目指すもの。


そこに逆転のチャンスを見出すとすれば。

そこにこの者達との調和を見出すとすれば。



変えることが出来ねば、潰さねばならないだろう。

紫堂という家を。


俺は…翠と同じ決意の上に立つ必要がある。


しかし今の情けない立場に居る俺では、それを口にした処で、"机上の空論"だと笑われるだけの気がした。


どうすれば信用を得られる?

どうすれば紫堂ではなく、"俺"としての言葉を信じて貰える?


暴力によって虐げられ続けてきた者達に、力の制圧は無効だ。


力の使い途はそうではない。

強さとは、そういう顕示に使うものではない。


それなら"表"の迫害と同じ事。


彼らは、俺の覚悟を"死"で見せろと言う。

少し前の俺なら、受容していたかもしれない。

それで皆が救われるのならと。


しかし"死"は逃げだ。

死からは…何も生まれない。

"無"だ。


俺は、久遠の存在に全てを賭けて、横須賀で一度死んだ。

あの時の覚悟が無駄だったとは思わないし、あれしか道はなかった。

俺は未来に賭けたんだ。


もしも生き返らせる者がいなかったら、どうなってた?

問題は解決したか?


いや…しない。

今度は残された仲間が犠牲になるだけだ。

問題は延々と巡り続けるだけ。


そう、生き返ることが前提の"死"でしか、未来は変えられない。

それは当然の事象。


それは俺が一度死んだからこそ判ったことで。

その当然さを知る前は、"死"は自己満足的な美談にしか過ぎず。


死ぬことは根本的な問題解決ではなく、大切なのはその後のこと。

未来を紡ぐために安易に死を選ぶのは、あまりにも無責任な本末転倒のこと。


この者達が俺の未来を捨てよというのなら。


だとすれば…

俺は覚悟を"死"で表わせない。


未来あってこその…改革だ。

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