シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「8年前、俺の目は狂ってなかった。この8年、俺の未来をお前に託してお前を信じたことに微塵の後悔はねえ。逆にあんな糞ガキの決断を、褒めてやりてえくらいだ。

お前は…実際よくやっていた。8年前に俺に言った通り、もう紫堂の犠牲者が出ないようにと、紫堂を変えていたじゃねえか。

お前は此処でそれを言わないけど、俺は黙ってはいられねえよ。ずっとずっと隣で見て来たんだ。口だけの連中とお前は違う。お前は、不可能なことを可能にする…、完璧主義を遂行出来る『気高き獅子』だ。このまま…お前のことを何も知らねえ連中に、お前が罵倒されるサマは見ちゃいられねえ。

正直…今にも斬りかかりてえのを抑えてる。だけど。だけどお前がそれを望まないなら、俺は…」


煌は――


「櫂を信じてくれ、この通り」


その場で土下座をしたんだ。


「!!! 煌「頼むッッ!!!」


「うああああん!!!」


泣き声がしたと思ったら、翠と…レイまでもが、煌の横に座って…土下座を始めたんだ。


「いいから、ゴボウ。俺を止めないで、ぐすっ…させてくれよ」


翠は目元を手で擦り、そして両手を地面について言った。


「正直…俺にはワンコのような覚悟で此処にきたわけじゃない。人がどうかなんて考える余裕ないくらいに自分で一杯一杯で。はっきり言えば…此処を早く通過して、強くなって元の世界に帰りたい。俺はそんな自分勝手な…駄目駄目な奴なんだ。

だけど…だけど仲間って言ってくれたんだよ、紫堂櫂は。見捨てなかったんだよ、実家からはとうに見捨てられ続けている俺を。

俺には、信じられる奴が3人居る。俺っていう存在を認めてくれている奴は、朱貴と紫茉と…兄上だけで。今はその兄上からも見捨てられてる状況で。俺はいつも優しい朱貴や紫茉を、守ることが出来なかった。1人では何も出来ない甘ったれで、何をどうすればいいのか判らない。父上も兄上も凄い奴なのに、俺は落ち零れで…出来損ないで、役立たずで。虚勢ばかり張るしか出来なくて。

こんな俺を叱って叩いたのは…紫堂櫂だけなんだ。卑下するなって、怒ってくれたんだ。俺は俺で居ていいって。

聞いてただろう? こんなこと…アカの他人に出来ないだろう? 普通なら、他人のことなんてどうでもいいだろう? だけど…そうしないのが紫堂櫂なんだ。

ねえ…俺は馬鹿だから、どう言えば判って貰えるか判らないけど、信じてくれよ、紫堂櫂の言葉。頼むから。この通り」

翠…。


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