シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「話戻すよ。このままだと、車は鎌倉の皇城についてしまう。その前に何とか池袋に向かいたい」
桜の元に早く行きたいんだと、玲くんは真剣な面差しで言った。
「師匠こっちの準備はOKだよ。ただ…首都高を飛び降りるのは少し怖いなあ」
「ん……それは最悪の場合ということで。何にしても僕が2人を守るからその点は安心して。僕としては、移動手段としてのこの車が欲しい」
そして玲くんは、更に顔を強張らせて。
「言っておくけど!!! 別に僕、青い車が好きになったわけじゃないからね!!?」
それは十分判っています。
由香ちゃんも頷いている。
「どうジャックしようか。運転席のドアを開けて…百合絵さん(もどき)を外に転がす?」
「転がる? 百合絵さん(もどき)」
由香ちゃんの提案にあたしは疑問で返した。
物理的法則に則った正しい光景だとしたら、百合絵さんもどきの体重はかなり重いものだろうし、少しでも転がそうとするあたし達の動きを見せたら、百合絵さんもどきからどんな反応が返ってくるか判らない。
此処は高速で走る密室。
戦闘状態となるなら、幾らあたし達には強い玲くんがいるとはいえ、場所的には危険地帯には変らない。
じゃあどうする?
そんな時、玲くんの右手が…青い光に包まれて。
「"耐電仕様"の本物なら…電気の力は無意味。だけど偽者であるのなら、何らかのショックは与えられるはず…」
ショックを受けないらしい本物、凄いぞ!!
だけど本物であるならば、どうなるのか。
しかし玲くんの中では、偽者だと確定しているらしい。
凄いな、疑う余地なく、断言出来るほどのものを感じ取れるなんて。
あたし達に目配せした玲くんは、静かに百合絵さんの真後ろについて…
バチバチバチ…。
青く光るその手を、百合絵さんの首…頸動脈付近にあてながら、更に首を締め上げたんだ。
野生動物のような…言葉にならない絶叫。
そして――…
「!!!!?」
巨漢、藤百合絵は…、まるで膨らんでいた風船が空気がぬけたように、見る見る間に縮んでいき、そして小さな小さな人形になったんだ。