シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「芹霞、戻れ!!! 何をしてんだよ!!! 早く戻れッッッ!!!」
窓から顔を出した玲くんが、真っ青な顔を向けて来た。
その声は荒げられ、動揺に掠れているようだ。
「僕は君を危険を晒したくないッッ!!! 頼むから芹霞、早く…っ、!!! 芹霞、芹霞伏せろッッ!!!」
やはり…玲くんの察知能力は凄い。
あたしの腕の中のクオンが鳴くのとほぼ同時期だ。
来たッッッ!!!
勢い余っての滑りすぎに注意しながら、大きな天板に身を伏せたあたし。
頭上で感じる疾風が髪を大きく揺らし、無事通過で終わったことを感じ取ったあたしは、鼻息荒くむくりと起上がり、息を整え気を引き締めた。
あれだけガクガクしていた足が治まっているのは、度胸が身体を制したのか、(一部)ふさふさクオンの温もりを腕の中に感じて安心している為か。
心臓に悪いことをしているのには間違いないけれど、だからといって逃げてたまるか、負けてたまるか。
玲くんとクオンの察知より僅差で遅れたとはいえ、あたしも異常を"聞く"ことが出来ていたことを実感し、心の中でガッツポーズ。
研ぎ澄ませたあたしの耳も好調のようで、"その気になれば少しだけ出来ているらしい子"に昇格出来そうだ。
この調子。
頑張れあたし。
「駄目だ、戻れ芹霞。頼むから!!!」
玲くんの動揺は激しいらしく、悲痛にも思えてくるけれど。
今はただ――
「玲くん、あたしはあたしが出来ることをするから、玲くんは玲くんしか出来ないことをやって!!!」
あたしを信じて欲しい。
「芹……っ、ちっ!!! そこで右斜めに飛べッッ!!!」
「ニャンッッ!!!」
玲くんが叫び、クオンが不自然な角度で宙を見上げると、玲くんの言葉通り…その手を、顔を固定した斜め上の位置に向けて、くいと上げる。
よし、あの角度でジャンプだねッッ!!!
多分あたしの身体能力では、ギリギリの跳躍だったんだろう。
飛び跳ねた瞬間、靴底に熱いものが走った…衝撃を感じたけれど、身体には被害は全くない。
成功!!!
立て続けにクオンが鳴く。
「ニャンッッッ!!!」
クオンが手を横に動かしてから下に動かすから、あたしはその向きに横移動してその場に小さく屈む。
今まであたしが踏んづけていた天板には無数の穴が開き、その横で屈んでいるあたしの頭の上にも、違う銃弾が通過したようだ。
成功!!!