シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
玲くんの目から鋭さが消えた。
代わって――
「ふふふ、楽しみにしてね?」
場違いな程の妖艶さを漂わせ、おまけに斜めから見上げる角度での流し目を、超至近距離でくらって…くらくらしかけた時、
「ニャンニャンッッッ!!!」
あうっ。
「あたしの尻をビシビシ叩くな、クオンッッ!!!
爪が…爪が、お尻に刺さってる!!!」
おかげで、処構わずの玲くんの色香からは脱却出来たけれど。
「また来たッッ!! 芹霞、そのまま右に転がれッッ!!!」
「了解ッッッ!!!」
あたしが動いた直後、今まであたしが手をかけていた部分が弾け飛んだ。
玲くんは運転席に引っ込んだようで、車中から凄い勢いで青い光が立ち上ってくるのが見える。
玲くんが…集中し始めたんだ。
走行速度が…増している気がする。
玲くんの力になれているのかな。
あたし…頑張るよ。
何度も何度も攻撃を避け、あたしとクオンの凸凹コンビは、無傷で天板を跳ねまくる。
「躱しているだけならキリないなあ。どうにかしてあのトラックを…って、あれ、あれれれ!!?」
トラックの上に、異物が現われた。
銃が浮いている…ように見える。
「見間違いじゃないよね…?」
どう見ても銃だ。
あれだ、クルクル銃だ。
ロシアンルーレットでよく出て来る、回転式の銀色の銃で。
それが宙の…中途半端な高さでふわりふわりと浮いて、その銃口があたしに向いていた。
それが1つ…また1つと増えて行く。
その状況が示す事柄がよく理解出来なかったあたしは、一瞬遅れを取ってしまった。
今度は研ぎ澄まさなくても判る、はっきりとした銃音が連続的に響き、動きを鈍らせたあたしに、それは全て向いて。
「また見えない敵だったの!!?」
そう叫んでしまったけれど、全然考えていない事ではなかったし、敵には変わらないんだし、今更その姿があってもなくてもどうでもいいけれど。
やばいッッッ!!!
チョコチョコと逃げ回るあたしを、一度に仕留めにきたのか。
ダン、ダン、ダン、ダン、
一斉に響く銃声が、やけに低速度(スロー)に聞こえた。
こういう速度は過去何度も経験している。
危機だ。
これは命の危機だ。
これは文字通り蜂の巣になる。
あたしは――
避けることが出来ない。
出来たとしても、あたしの運動能力では無理だと…直感で、本能で悟ったんだ。