シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


敵の正体を見定められるのは、目で見える回転式拳銃(リボルバー)のみ。

その確認だけに目を開くことにした僕。

どこの者であろうと、僕を皇城に送り込みたい奴の息がかかっていることは間違いないだろう。


型は「リボルバーのロールス・ロイス」といわれる、コルト・パイソンのような気もするけれど、似せたものかもしれない。


連続する銃音は8回。

そして充填される銃弾。


僕は…見えぬ敵を叩きのめしながら、宙に浮いたままで繰り広げられる、その不思議な光景に目を細める。


レンコン状の回転式弾倉(シリンダー)に詰められたのは…カプセルのようなものに見えたんだ。

それが発射されたら、薬莢になるのか?


また違う銃を注視して見た。


8回の銃音。

そして充填されるのは…


「カプセル…3つだけ?」


そのカプセルが3つの銃弾となるにしても、何で8回も撃てる?

そこのからくりが、"虚数を放つ銃"を説明できるのだろうか。



そう、この銃はただの銃ではない。


トリガーが引かれた瞬間、ただの物体でしかなかった銃弾は虚数を発する。

0と1の変化した形ではない、純なる"-1"に。

それはまるで、この世に息吹を得た、生まれたての赤子のように、何もない空間に生み出されるんだ。


それは…物理的法則を一切無視した"異常"発生。

しかも青い車限定、そして僕の狙い撃ち。


人間の身体には、弱い電流が流れている。

この微弱電流は、筋肉や神経を始めとして、胃腸など消化器官の他、心臓の鼓動を保ったりしている。

体内に流れる電気を利用して、医療現場では心電図・筋電図などの波形グラフから判断する検査方法の他、体内にある水素原子核が磁気に共鳴して微弱な電波を発生することから、MRI(磁気共鳴診断装置)により、コンピュータで合成した画像でほぼ全身の断層画像を診る事が可能になっている。

そこまで人体と大きく係わり合いを持つ微弱電流は、気というものに近しいものではないかと僕は思っている。


人体というのは絶えず細胞が死滅と再生を繰り返していて、気づかずに損傷を受けていることが多い。

それに対して一々痛みを感じずにいられるのは、体内を循環する微弱電流…気の流れのおかげで、この気が強ければ強いほど、そして統制が取れれば取れるほど、後天的に起こる怪我や病気はし辛くなり、したとしても回復力が高くなる。

僕は先天性の心臓病だから、心臓発作が起きるは仕方がないにしても、それ以外は至って健康だし、何日も徹夜しても平気だ。眠くはなるけれど、身体に睡眠不足の名残は現れない。

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