シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


今、虚数の影響を受けずにいるのは、クオンの結界のおかげだ。

そして僕の結界は、クオンを苛ませた、虚数の"超音波"を遮っている。


持ちつ持たれつの相互関係。

中々いい関係だよね。


そして築き上げた信頼関係は、僕だけに限らず。


芹霞が雄叫びを上げながらクオンを持ち上げ、派手に炎を撒き散らして銃弾を弾いているのが見える。

僕が寸前で止めた銃弾の雨をクオンなら弾けると、そう信頼したからこそ僕は芹霞を託し、僕自身はトラックに乗り込み、その数を減じに行ったんだ。

僕自身、追い詰められたことに腹立っていたし。


そしてクオンは期待通りの働きを見せていたはずで。

ただ難点は体力までは回復していなかったこと。


今思えば、よくそんなクオンに全てを任したものだ。

そこまでの深刻さを見抜けていなかった僕は、焦って戻ろうとしてたのだけれど。


「火炎放射ネコ、いっけええええ!!!」


………。

クオンを、武器にして使うとは…芹霞の発想も凄い。


化け猫はとうとう芹霞の手と化して、彼女の攻撃力となったか。


合体した…"化けセリカ"?

或いは、芹霞を身体として新たに取り込んだ…"スーパー化けネコ"?


炎を吐き続けて苦しいはずなのに、芹霞と一体となったクオンの顔が幸せそうに見えるのは…遠目ゆえの僕の勘違いだろうか。


………。

勘違いだろう。

あのネコは"M"じゃない。

むしろ"S"だ、"ドS"だ。


芹霞には超常能力も、紫茉ちゃんのような戦いのセンスに優れた身体能力もないけれど、度胸と瞬発力はピカイチだ。

あのかなりの重さのクオン入りのカバン、…始めはふぅふぅ言って持ち歩いていたのに、今は軽々とぶんぶんと振り回していて。


それは芹霞の特質なのか、緋狭さんと同じ血によるものか。


芹霞は、予想外のことを突然仕出かすから、本当に面白い。


それに何度僕は助けられてきたことだろう。


先程の…僕の力になりたいと、そう言って怖いのを我慢して無理をして笑った芹霞を思い出す。

言葉では伝えきれない程、愛しさが溢れたんだ。


今まで僕は、芹霞を自分のものにしたいと思ってきたけれど、僕の方が芹霞のものになってもいいと…いや、もう既になっているのだと。

信じてと訴えるその強い瞳に、僕は抗うことが出来なくて。

だからこそ、芹霞の信頼に応える為にも、何が何でもやってやろうという強さを芹霞から貰ったんだ。
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