シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
確かに僕は芹霞の身を案じて、危険な目にあわせたくなかったのは事実。
そして同時に――
いつでも守り続けたい愛しい少女が、僕の庇護から抜け出ようと必死になっていることに対して、寂寥感と焦慮感をも感じていたんだ。
例え芹霞に対する信頼に応える為とはいえど、あの状況で僕が芹霞を車上に放して、運転席に1人引き下がったのは、脅しめいた"ご褒美"の為だけじゃない。
あれは口実だった。
あんな時なのに、
確認したくなっただけなんだ。
僕への愛情を。
ここまでの強行をする芹霞の行動源は、僕への愛だと。
愛しさが溢れている僕と、その心は繋がっているのだと。
あんな時なのに、
――紫堂櫂を愛してる!!!
超えたい壁を、意識してしまったんだ。
同じか、否か。
芹霞の中に…これから芽生えてくるだろう櫂への心を不安に思えばこそ。
拒絶されない現状に、僕は安心したかった。
「師匠、オーバーヒート…してる!!!」
由香ちゃんの慌てた声に、僕は思わず意識を現実に戻した。
何かが焼き切れたような匂い。
立ち上る白煙は、エンジンがある下部からだ。
もしかすると、クオンの炎の飛び火の影響もあったかもしれない。
だけど置かれている状況において、クオンの力は絶対的に必要だった。
この車はもう…限界だ。
このままだと、確実に大炎上だ。
見れば由香ちゃんは、芹霞に手助けして貰って、車の上にとよじ登っている。
ひとまず、クオンと芹霞がいるのなら、由香ちゃんは安心だ。
……ああ、落ちる!! 由香ちゃん頑張れ!!!
そう思いながら、僕は拳に力を集中して、
「はっ!!!」
外気功と力を組み合わせて、天板に打ち付けた。
もう何度も試みているけれど、簡単には壊れてくれない。
耐力の他、耐電加工でもされているのか。
それでも回数を重ねれば、ぶち抜ける…そう思っていたけれど、時間がないらしい。
だとしたら、悠長なことをしてられない。
バリバリバリ…。
高電圧に変じた力を纏った拳を、天板に打ちつけた。
高電圧は異常な熱を孕み、溶け出していく。
「よし!!!」
幸いにも、耐熱効果が一番弱かったらしい。
僕は出来た孔から中に飛び降りながら…少し前の、車中て゛のことを思い出す。