シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「クオン、孔から…尻尾を出せ!!」


芹霞と同時に真上から感じ取った気配に向けて、叫んだ僕。

天井の孔から出て来る、長いふさふさの尻尾に…僕は急いで片側を溶かしきった助手席のシートベルトをひっかけた。


「芹霞に掴ませろ!!!」

「ニャア!!!」


「ありがとう、玲くん!!! 由香ちゃん、ひっぱりあげるから…だから下みないで、ジャンプしてあたしの手を掴んで!!! 合い言葉は…女は度胸!!!」

「……女は…度胸!!! ボ、ボクも頑張ってみる!!! ぬああ…落ちる~!!!」

「よし手を掴んだ!!! 引っ張り上げるからね!!!」

「ニャアアアア!!!」

「お前は手を出さなくていいから!!!」

「ひいいいいっっ!!! 神崎、下…燃えてる、火が出てる!!!」

「ぐうううっっ!!! 由香ちゃん、落ち着いて。下は見ない…!!!」


ビンと張るシートベルト。

炎に包まれ始めた、隣のワゴン。


猛速度で突っ込んでくるバス。

放たれる虚数の影響を、僕は力で相殺し続け、僕は炎の影響から由香ちゃんを守る為に、ワゴンから距離を開けるように運転する。


「よし、成功!!! 玲くん、OKだよ!!!」

「由香ちゃんとそのシートベルトに掴まってて!!!」


僕はシフトレバーを動かしながら叫んだ。


ワゴンが炎上するのが確定事項なら、あのバスを巻き込んでやる。

わざと一度減速し、バスを誘き寄せ…射程内に入ったぎりぎりの処で、加速する。


ワゴンが爆発音をたてて炎上した。

それを間一髪抜けた僕達だったが、


「玲くん、炎纏ってバスが突っ込んでくる!!! 何か…変な音たててるよ!!?」


あの中に敵がいるのか判らないけれど、まるで特攻隊だ。

爆発寸前となった自らの乗り物を、逆に僕達にぶつけて来る気か。


あの大型バスが炎上したら、ワゴンの時とは比較にならない広範囲の被害に、今度こそ巻き込まれるかもしれない。

そんな切迫感に追い詰められながらも、炎を纏ったバスがトラックの後ろにぴったりと付くのを見て、僕はその魂胆が判った気がした。


「……成程ね。爆死よりも…あの出口から追い出したいのか」


鎌倉の…皇城へと続く出口に。
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