シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

経路 煌Side

 煌Side
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初めて来た世界だと言うのに――

妙に懐かしさは感じていたんだ。


特にこけしとか牛女が現れた時から。


何処をどうだとかいう具体性は全くねえけれど、肌が馴染むというか、何処かほっとするような…おかしな感覚を覚えていたのは事実。


その理由にもなりそうなことをこけしは言った。


此処が…俺が生まれ育った場所だって?

この牛…俺の髪から黒色を奪ったって?


挙句の果てにこけしは言った。


「この者は…ウジガミだ」


そしてそれは――


「妾達の教典『ヨウシュノヒミツ』におけるメイシュ」


おまけになれば、


「儀式を通じて…メイシュウジガミとの間に生まれたのがそなた」


ぽかんだ。

何を言っているのか判らねえ。


ウジガミっていうのは苗字か?

だとしたら、メイシュっていうのは名前か?

何でこけしは「メイシュウジガミ」って言った?

ウジガミメイシュはハーフか?

俺…ハーフなのか!?


いや、だけど――

――メイシュウジガミとの間に生まれたのがそなた。


俺は…そのハーフから生まれたというのなら、クォーター?


親父…なんていたのか、俺に。

突然出てきたメイシュ・ウジガミ。

悪いけど…何の感慨も起きねえや。

だって俺は、死ぬまで如月煌で、家族は神崎姉妹だけだし。

もっと広く言えば、櫂や桜や玲だって俺の家族みたいなもんで、それ以外の家族は存在しねえ。


だから知らねえよ、ウジガミ家なんか。


そして気づいたんだ。

忍者達からの俺達に…いや、俺に対する視線の種が変わったのを。

それまでの憎悪とか戸惑いとか…そんなものではなく、愚鈍な俺にとってはあまりに無縁である"尊敬"あるいは"崇拝"。

そこからくる…困惑。


待て待て待て。

お前達、どうして傍に神々しい櫂がいるのに俺にそんな目よ!?

お前達の目、腐っているって。


そんな時、ぶるぶると…大きな乳を揺らして驚いた顔をしている牛女と目があった。


「あんた…ウジガミだったのかい!!」


………。

牛が叫ぶウジ…。

まさか……。


「ウ・ジ!! 勝手に濁点とらないでくれよ!! それに私は牛じゃないよ!!」


――俺はワンコじゃねえッッ!!


妙なシンクロ。

ウジガミの名前を聞くよりも、この牛女とやり合っていたほうが妙な連帯感を覚えて懐かしい気分になってくる。

昔昔の遥かなる昔、この牛女と会っていた記憶も髪の色変えられた記憶も全く微塵もねえけれど、この…妙に馬鹿っぽい処に共振する心は確かにある。

それを馬鹿仲間と捉えるのか、幼馴染と捉えるのか…悩み処だけれど。
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