シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


チビは尚も言葉を続ける。

「卑屈さに慣れすぎて、更には矜持に動けず、相手の出方を窺うことしか出来ない奴らは、自分達が動く為の"口実"が欲しかったのさ。よかったな、馬鹿犬が…皆が崇める蛆ワンコで」

「………は?」


「あはははははは」


チビの声に笑いだしたのは牛女。

こけしの頭の上で、乳がぼっちゃんぼっちゃん揺れている。


「中々…物分かりが良いじゃないか。ただのリスとは思えないね」


「レイ殿は、リス国のリス王子であらせられる」


威張って、臆面もなく言い切ったのは小小々猿で。

神々しい金色を…無駄に放出している気がする。


仮にも式神、どうして小猿の嘘を見抜けないんだ?

小猿の純真さが…姿形変えれば、ここまでギャグになるのか。


更に――


「ゴボウ。1つ忘れてる。

僕は…美リスだ!!」


恥ずかしいことを補足したのは、多分…人の頭の上で尻尾をぱたぱたさせてふんぞり返っているだろう、チビリス。

きっと小さすぎる鼻をひくひく動かして、得意顔なんだろうな。


そしてそんなチビに対して――


「何で笑うんだよ!! 本当のことだろう!!?」


どどっと…笑いが起きたんだ。

こけしや牛女だけではなく、それまで敵意を向けていた…忍者達からも。


ぴょこんぴょこん。

遠慮無く俺の頭を蹴りつけるようにして、飛び跳ねて怒っているチビはとりあえず無視して。


笑った……?


人間なら自然の感情だけど、それをこの忍者達から感じ取った俺は、ただひたすらびっくりして。


「煌…驚く要素は何もない」


いつの間にやら俺の隣に居た櫂が、静かな…柔らかな微笑みを浮かべて、俺に言った。


「心があるのだから」


目の前では、忍者達がわらわらとチビに寄ってきて、胡桃を転がしては、チビの喜ぶ姿に和んでいる。

小猿には、猿回しをさせようとしている変な忍者もいるけれど。


可愛いものを愛でたいと思うのも、また心があるから。


そうだな…。

うん、そうだ。


「俺達と、何一つ違わねえ」


その時――

ざざっと砂利を踏む音がして、その方向を見れば…こけしだった。

こけしは、悠然と歩いてきた。

頭上に、乳を乗せた孫を引き連れて。


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