シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「妾達は、『妖蛆の秘密』を教典とし、妖蛆であるウジガミを祀っている集団。妾達にとってウジガミとは、此の世界で縛された妾達を開放する、希望の象徴」
声高らかに言えば、場は静まり…忍者達はまたその場で片膝をついて頭を垂らして…聞く姿勢に入った。
もみくちゃにされたチビが、涙目になりながら走ってきて…俺の頭上に飛び乗る。
「皆が差し出す僕の胡桃…僕が取ろうとすると、さっとひっこめて意地悪するんだ。酷いや…」
表情が明確に判るリスだけに、皆に玩具にされたらしい。
そんな愛情が判らねえチビは、頭上でシクシク泣いている。
よしよしと、伸した手でチビの身体をまさぐって慰める俺に、こけしは薄く笑いながら、言葉を続けた。
「教典は難解なルーン文字で書かれている故に、全解読は不可能な状況であり、ただの魔書としてしかの存在価値がなかったものだったが、"ある者達"の解読で転機を迎えた。そこから…ウジガミ信仰は始まったと言える」
冷ややかな面持ち。淡々とした口調。
こけしは依然俺を見続けている。
「現状においても、いまだウジガミの姿は謎に包まれ、蛆だという説もあれば爬虫類のような蛇だという者もおる。しかしそれはあくまで概念上のこと故に、妾を含めて誰も実際の姿を見た者はおらず。そんな時"ある者"が2つ予言した。1つはウジガミが妾達を開放すると」
櫂は…何かを考え込んでいるようだ。
「しかしそれらしき者が現われないことから…妾達は焦れに焦れ、儀式によって、人為的に"蛆神情報"を"転写"したものを創り出した。よって、そなたの神属性は…遺伝ではない」
つまり、俺の親父はウジガミ関係ではないと?
だったら誰か聞こうとしたが、やめた。
別に誰でも良いし、関係ないし。
………。
まあ良いけどよ、俺の人生…生まれも育ちも、俺の知らねえ間に、どんなに身体弄くられてようが。
笑いすら出てこねえや。
はいはい、もう勝手にしてくれっていう感じだ。
「儀式が成功したのか不成功だったのか…そなたは凶暴さを見せつけた。元々は未知数たる異世界の闇の盟主、ウジガミ。例え模したとはいえ、制御不可能になることにより逆に妾達を滅ぼすことになるのを防ぐ為、妾達の仲間内で力強き者達に、闇の刻印を施した。妾もその1人」
「それが…黒き薔薇の刻印…か」
首筋を押さえながら言った櫂に、こけしは頷いた。