シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「物質の組み替えが成功すれば、壊れるものなどなくなる。妾達の身体のように脆くはならぬ」


欠損した肉体を持つ此処の奴ら。

こけしは何処が"奇形"なのかは判らねえけれど、こけし達は簡単に壊れてしまう我が身を嘆き、壊れぬものを創り出そうとしたのか。

恐らく、それを…自分の身体に向けたの顕著な例が藤姫で、脆い身体を守る防御壁としたのがこいつらで。

表裏一体のような気がする。


こけしの後についてぞろぞろ進むが、突き当たりにぶち当たった。

途中もそうだが、この塔の中…ドアらしいドアが見当たらねえんだ。


一体どうするつもりだとこけしを見たら、こけしはすっと人差し指を宙に向けて、何やら空に描き始めた。


すると――、


「!!!?」


宙に突如現われた水色の光。

それは計算機のような数字ボタンの入力画面を創り出して、こけしはその上で指をチョイチョイと動かすと、今度は今までなかった空間に、自動ドアが現われたんだ。


………。


「……煌」


櫂が俺の肩をぽんと叩く。


「頼むから、そのキラキラとした目はやめてくれ」

「えー。すげえじゃん!! スパイになったみたいで!! もしや…こけしは既にスパイか? お前のコードネームは何だ、Kか!? だったら俺もK…はあれ、ダブっちまうな。だったら俺…ウジガミのUの方がいいかな。でもUって迫力ねえよな…所詮ウジだもんな…。ウジでもスパイできるのかな、どう思う、こけし先輩」


鼻息荒くこけしに聞いた俺は、


「煌…そこでやめとけ。彼女…笑いすぎて酸欠死しそうだ」


何故か櫂に宥(なだ)められた俺。

やがて、櫂と小猿の介護の甲斐あってか、肩を震せて笑うに留めたこけしと共に、自動ドアの奥に進めば、突然床がせり上がって上移動を始めたんだ。


「エレベーター!!?」


驚く小猿の問いにこけしは軽く頷いた。


「あれ、牛女達は?」


今更のように気づく俺。


「ああ睦月達は準備があるから、別行動だ」

「準備?」


こけしは笑うだけで何も答えなかった。


硝子のエレベーターは外の景色がよく見える。

黒い壁だったのに、何で外が見える?


「中から見渡せるように改良を加えておる。この塔は…妾達の要となる塔だからな」


"輝くトラペソヘドロン"α…らしい。


それをもたれ掛るようにして眺めていた櫂は、ある一点の処で目を細め、じっくり見ていた。


「あそこは?」


指差した処は、森みたいな処。


「"供儀の森"。罪深き者の収容場所だ」


そんな時、暴風が巻き起こって…硝子の向こうが真っ白になってしまった。


「砂嵐だ。一定時間になるとあれがくる。皆の者の生命維持装置とでも言えるべき装置は、砂にやられたらただのガラクタ。よってこの時間は、外に出歩くことを禁じておる」


櫂は何も言わず、ただじっと白い景色を眺めていた。
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