シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

真意 櫂Side

 櫂Side
**************



信じたいのに、信じることが出来ない。

信じられないと思うのに、信じてしまう。


人は――

どちらの道を辿るのが幸せなんだろう。


ただひたすら救済の日を心待ちにして、しかしその日がいつ現われるのか判らず、突然その日が現われたことに疑心暗鬼となり、結局何が真実か判らない。

期待に惑わされ、希望に振り回され続け……、表を憎み同時に表を愛し、執着して渇望する様は表裏一体の愛憎で、諦めを見せぬその情は狂気にも似て。

そこまで追い詰めたのは、俺達と同じ人間…表の奴らに他ならない。

罵倒され攻撃されるの覚悟でいた俺に、煌の存在が空気をがらりと変えた。


俺達へ敵意を向けていた者達からの歓迎に、正直俺は戸惑った。

此処までの歓迎を受けるとは思っておらず、だからこそここまで期待かけられていたとは思わずにいて。

その輪の中心は煌だと思った時、それを頼もしくも思う反面怖くなった。


『ご帰還』


即ち、この者達は――

信仰の中心たる煌が、此の世界に還るのが当然と思っていることに。


だから待っていたのだということに。


それを前提とした調和。

それが当然の帰結。


そして俺は、感じていた。


夢路の説明にはまだ不十分すぎたということに。

あの説明だけでは不足が多すぎる。


肝心な部分は煙に巻かれて強制終了されている。


だから俺は、宴会の最中に夢路を呼び出したんだ。

夢路はそれが判っていたらしい。

目が合っただけでこくりと頷き、俺に着いてこいと顎で促し移動を始める。

煌も翠もレイも護法童子も、皆それぞれに盛り上がっていたから、誰も俺の動きに気づく者は居ないだろう。


それでもいい。

いや、むしろ煌には気づかないでいて欲しい。


恐らく煌に訊かせたくないから、夢路はあの場で曖昧にぼかしたはずなのだから。

もしも…俺の予想通りであるのなら。


< 917 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop