シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「罪悪感があったのは真実。それを否定する気はない。しかし…それを越えきった処に、今の関係がある。

俺は、如月煌という人間を必要としている。これからも煌と同じ地を踏み、同じ風景を見ていきたいと思う。

例え芹霞を巡って煌と争って泣くことがあっても、それとは別次元で俺達は強い絆で結ばれている。それに揺らぐ仲ではない」


そして頭を垂らす。



「だから…煌は諦めて欲しい。

俺は煌を此処に残して行く気はない」


どう考えても、その選択肢はとれない。

それが俺のエゴだとしても。


「………」


「煌の人生を、幸せを…俺に預けてくれ」


「………」


「俺は多々問題を抱えている。表と裏を統合せずにいて、何を言うかと思われても…此処は引き下がるわけにはいかないんだ、俺は。簡単に煌を渡せられない。そんな…軽い関係ではないんだ。

その為にお前と戦うことがあっても、俺は負けるわけにはいかない」


夢路はゆっくりと口を開いた。


「あれ程、力による制圧を避けていたそなたが、それを言うか」

「仕方が無い…。煌を手に入れる為なら」

「そなたは…妾の心が判らぬのか」

「………。俺にも煌が必要なんだ。これだけは譲れない」




「ならば――」




夢路は言ったんだ。



「……入ってこい」



俺の背に向けて。


「え?」


そしてその声に導かれるようにして――



「人がいない処で――

何プロポーズしてるよ、櫂…」


眼を赤く充血させた煌が中に入ってきたんだ。

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