シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
やがて――
「…こけ…、ば…ウシ……ぶっ…」
堪えきれないというように、夢路は大笑いを始めたんだ。
……もう慣れたけど、本当に派手な笑い方をする。
「櫂…今のトコ、爆笑するトコか?」
困った顔で俺に聞いてきた煌。
「さあ…。人にはツボというものがあるからな」
「こけしのツボか…。どこにあるんだろう」
腕組みをして考え込んだ煌に、俺は言った。
「煌…俺は、お前が残ると言っても…連れ帰るつもりだった。今更かもしれないけど…いいのか?」
「……。俺、お前に捨てられてもついていく気だったんだ。だから答えは決まってたけど…よかったよ、捨てられねぇで」
そしてまた煌は目を拭って笑った。
「『気高き獅子』は頭下げるなよ。そういうのは俺がするからさ。
しかもそれが俺の進退に関することなら、俺の為にもう頭は下げるな。そんなことしなくても、俺がお前についていくから。だからお前はいつも通り、胸張って…正々堂々と、自分の道を歩いて行け。お前の後ろは俺が守る。
それが幼馴染の…護衛役の務めだろ?」
俺は――
我慢しても尚震えてくる唇を、必死に噛みしめた。
「何泣くよ、お前」
「…泣いてるのはお前の方だろ」
「俺は泣いてねぇって」
そして俺達は笑いあい、互いの背中を手で叩いた。
それだけで十分なんだ、俺達は。
「夢路」
俺は身を屈んで、深呼吸をして落ち着かせている…夢路の顔を覗き込んだ。
「煌は…「……よい」
俺の言葉を遮るようにして、夢路は柔らかく笑った。
「試させて貰ったのだ」
「「え?」」
「ふっ…。緋狭の言う通りだったわ」
何か思い出すように笑う夢路の顔は、どこか穏やかで、さっぱりとしたものだった。