シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「緋狭姉…?」

「ああ。此の世界に来た緋狭に、笑って言われた」


――何をしても、坊と煌は離れぬ。試しに…坊に情で訴えてみるとよい。それで煌を手放すのなら、坊はそれだけの男。信念なき男に、裏の命運をかける価値はない。速攻切り捨てよ。


緋狭さん……。


「生きたいと思う道に進めることこそが妾の願い。ならば行くがよい。己の信じた道に――…」


夢路は微笑みながらそう言った。


果たして――

本当に試していただけだったのだろうか。

俺は…煌を手元に置きたいというのは、夢路の正直な心だと思うんだ。

ウジガミとしてではなく、息子として、家族として。


煌の決断をどんな思いで聞いていただろう。


全ての思いを俺に託した夢路。


ならば俺は――

夢路の心を汲み取って、前に繋げていかねばならない。


俺を信じてくれたのなら、俺はその心を裏切ってはいけない。

それは夢路だけではなく、ここの住人にも同じ事。

心を預るということは、軽いことではない。


夢路は立上がる。


「よい時間だ。そなた達に見せたいモノがある。ついてこい」


そして部屋を出て、連れられたのはエレベーター。

先程乗ってきたのとは違い、外界が一切見えない質素で窮屈な作りになっている。


上昇していたエレベーターが止まった。


「最上階。ここには部屋が1つある」


夢路はまた宙に指先を動かし、出たパネルに何かを入力する。


「全ての情報は…ここに集約されている。

そなたが知りたいことも、答えられるだろう」


ドアを開けて進む夢路。



「すげぇ…なんだこりゃ!!」


広い室内は――

一面、巨大で多くの機械で埋め尽くされていたんだ。


全てが忙しい光で点滅し、何かが動いている音がする。

玲や遠坂が見たら、大興奮して騒ぐに違いない。


情報の管制――。

多くの情報をこれらの機械で集めることは可能なのか?

それだけの技術が此処にはあるのか?

この硝子の塔はSFめいた近代的な設備であったにしろ、近代という身形はしていなかったここの住人。

正直、玲以上の…電脳世界に通ずるような者は見ていない。

指導的立場にいる夢路も睦月も…そんな気配はなかった。


しかし、此の世界の技術は、確かに突出している部分がある。

榊を初めとした、瀕死の者達を救済出来る生命維持装置。


命の情報すら…此処ではまとめあげられるというのか?

ではそれらを開発したのは――?


「この機械を構築したのは、久涅でも異人でもない」



俺の疑問を見越した夢路は、奥を指差した。



「――あの男だ」



そこに居たのは――。

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