シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
景色が薄暗いせいか、紅皇サンがお疲れなのか…彼の顔も姿もくすんで見える。
いつもほどの鮮やかさは感じられない。
「葉山は一度ここに運ばれた。一時は危なかったが、容態が安定したから上のVIPに移させた」
とりあえず桜ちゃんは無事らしい。
ほっとして思わず顔が弛んだ。
「行ってやれ。俺は此処で紫茉と待ち合わせしてる。後で行くから」
「え、あたしも紫茉ちゃん……」
「ほら行くよ、神崎!!」
待っていると言おうとしたあたしを、ずるずると由香ちゃんが引き摺った。
紅皇サンは、じっとクオンを見ていた。
赤い目のクオンを。
どうしたんだろう。
しかしクオンは動かない。
鳴きもしない。
アクセサリーが板に付いてしまったのか。
そして紅皇さんと別れ、今度は階段から行き着いた、懐かしきVIPルーム。
ドアを開ければそこには――
「桜!!」
「桜ちゃん!!」
「葉山!!」
包帯だらけの桜ちゃんがベッドに横たわっていたんだ。
桜ちゃんだけしかいなかった。
「桜、大丈夫か、桜!?」
玲くんの取り乱し様は凄かった。
思った以上に桜ちゃんを心配していたらしい。
桜ちゃんに繋がれた心電図。
それで桜ちゃんは生きているというのが判るけれど、包帯ぐるぐる巻にされた痛々しい姿では、生死が確認出来ない。
「うぐっ……桜ちゃん……」
思わず涙が零れた。
いつもクールで目をくりくりさせていた桜ちゃん。
桜ちゃんのこれからはどうなるんだろう。
姿が変わったとしても、あたし達の友情は変わらないけれど、桜ちゃんが納得しない気がして。
そんな時、玲くんが目を細めて、心電図を見ていた。
「どうしたの、玲くん」
「………」
そして考え込み、言ったんだ。
「何か……違う」
端麗な顔は翳っていた。
違うというのは、桜ちゃんのことなんだろうか。
「玲くん、でも桜ちゃんは手術したばかりだから包帯姿に違和感あるのは、仕方が無いよ?」
「……。火傷なら皮膚移植をしたはずだ。危篤から持ち直したとはいえ…化膿止めの点滴を外していることも変だし。桜の脈拍が……早すぎる」
心電図には100前後の数字。
「いつでもどこでも取り乱すことのない桜の脈拍は40前後。それが100まで上がっているのが傷のためだというのなら、それだけの負担が体にかかっているということ。その為の処置がなされず、ぽんと放置はおかしすぎる。仮に朱貴が紫堂の名を持ちだしたのなら、どうして医療チームが待機していない?」
あたしは由香ちゃんと目を合わせた。