シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「だけど師匠、朱貴だっていたんだし…」

すると玲くんは言ったんだ。

「以前、確かに僕は紫茉ちゃんに僕の電話番号を教えた。しかし紫茉ちゃんは、朱貴に…僕のを含めて男の携番を全て消されたと言っていた。

だから芹霞に電話をかけることが出来ても、僕に電話をかけることは出来ないんだ。少なくとも紫茉ちゃんの電話からは」

「え? だけど電話かかってきたじゃない。紅皇サンからだったけれど」



「僕は――

朱貴の電話口で、紫茉ちゃんの声を聞いていない」



「倒れてたんじゃ…」

「その可能性がないこともない。けど、もう1つひっかかることは…桜があの地下室で火傷を負ったということ」


「何がひっかかるんだい、師匠」


「あの地下室は…緋、紅皇の領域だ。紅皇が生きている限り、あの結界は有効であり…他人の好き勝手は許さないはず。よりによってあの場所で、桜が紅皇が得意とする炎の怪我を負うのはおかしくはないだろうか」

あたしには超能力がないからぴんとこないけれど、桜ちゃんの火傷がありえない類のものであるのだとしたら。


「じゃあ紅皇サン……」


「あの電話の後、僕達に異変が起こったんだ。そして、全て…疑いなく、朱貴の言葉通り僕達は進んでいる。八階を教えたあの婦長もまた…息がかかっているとすれば」


玲くんは溜息交じりに言った。


「恐らく…電話の時からの朱貴は偽者(フェイク)だ」


「え、師匠、さっき会ったじゃないか!!」


「あれも違う。そうだろう、クオン?」

「ニャア!!」


クオンの目は、瑠璃色に戻っている。


何ていうこと。

あの紅皇さんまで偽者!?


「もうボク、何が何やら……」

「うん、あたしも何が何やら…」


「もしかして、こっちに来た方が、罠だったのかもしれないな」


「え?」

命からがら逃げてきたというのに。


あたしは、包帯だらけの桜ちゃんを見た。

桜ちゃんだという先入観で見れば、どこまでも怪我した桜ちゃんとしか思えないけれど。

だけどもし、玲くんの言うことが正しいのであれば。


この桜ちゃんは――



「この桜も――」


玲くんは言い切った。


「フェイクだ」



と。


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