シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
包帯だらけの小柄な体。
桜ちゃんだと肯定出来る要素もなければ、否定出来る要素もない。
フェイク――偽者。
下の階であった紅皇サンもそう。
あちこち偽者。
あたし達を罠に掛けようとする悪者。
玲くんは…そう言うの?
ごくりと唾を飲み込めば、不気味なまでの沈黙が流れた。
緊張感が強まって身を強張らしているのはあたしと……由香ちゃんらしい。
玲くんはじっと心電図を見ている。
鼓動を電気信号にしたこの機械に、電気使いの玲くんは何を感じるのか。
……心電図の数字はずっと100前後で、規則的な波形を見せている。
心の動きを鼓動として捉えることが出来るというのなら、偽者だと言われている…このベッドの上にいる包帯の奴は、どんな心境でそれを聞いているのだろう。
図星指されて、ドキドキしたりしないんだろうか。
しかし時間は過ぎゆくけれど、心電図の数字は上がることはない。
波形は乱れることはない。
やがて――玲くんは言ったんだ。
「この心電図の機械も…フェイクだ。この数字や波形は、元々この機械にセットされているものだ」
「へ!?」
なんと!!
ただの見せかけの機械だったのか!!
「それより……」
玲くんの顔が険しくなった。
と思ったら、突然目をつぶり、動かなくなってしまった。
…え?
こんな状況で、おやすみですか?
あたし達を放置プレイしちゃいますか?
あたしは由香ちゃんと顔を見合わせた。
あたし達はどうすればいいのだろう。
長い沈黙に耐えきれず、右にいる玲くんの肩を指で突っつこうとしたあたし。
その足を、左に居た由香ちゃんが踏んづけた。
「っ!?」
涙目で飛び上がったあたしに、由香ちゃんはしーっと人差し指をたてて、ひとつの方向を促す。
それは足元に置いた、化け猫クオンだった。
クオンは瞳を細めて、声を押し殺すかのようにして唸っている。
ベッドの下に向けて。
ベッドの下に――何か居るの?