シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「ニャアアアアン!!!」



そこに飛ぶのは――またもや化け猫。

しかも火炎放射にて。

……いつもより低空飛行なのは、見ないフリをしてやろう。


案の定、怪しげな呪文の後、蛆を溢れさせて崩れる人型。

構成されていたのが蛆だと確認出来るより早く、火炎が根こそぎそれを燃やし尽くしていく。


「「ナイスクオン!!!」」


執拗に付け狙う、黒い薔薇と蛆…一体何なのよ!!?



「あ、師匠ッッ!! 葉山に気をつけて!!」


由香ちゃんの慌てた声に、はっと玲くんの方に顔を向ければ…桜ちゃんは首元の玲くんの手を軸に逆上がりのようにぐるんと体を動かしていたところで。


上がりざまに開脚した足が玲くんの頭を狙うけれど、玲くんは横転してその攻撃を避けた。


美形のアクロバッティング。

小柄ながらも機敏に動く桜ちゃんと、優雅さを忘れず…力強さを増した闘い方をするミス桜華。

ああ目の保養…なんて暢気に感嘆する間もなく、更にはあたしの大好きな人達の闘いは、ただハラハラするばかりで。


そこに参戦したクオンを宙で、真上から肘撃ちした桜ちゃんは、バツ印を作るように、両手を前でクロスして…玲くんと間合いを取った。


「ニャアアアアア……」


あたしは重そうに落下するクオンを両手でキャッチする。

お前は体が重すぎるんだって!!

…人のこと言えないけれど。


「……?」


窓から差込む陽光が、桜ちゃんを照らせば…桜ちゃんの指がきらりと光った。


あれは――。


「糸!?」


触れば切り裂かれる桜ちゃんの武器、裂岩糸。

銃弾すら粉々に出来るあの武器を、桜ちゃんは…玲くんに向けるというの?


「桜ちゃん、駄目!!!」

「芹霞、出て来るな!!」


玲くんの一喝で、体の自由が奪われたあたし。

これは金縛りというものに近いのだろう。


それを合図に、桜ちゃんは動いた。


嘲るような笑いを口もとに作ると、ゆっくりと手を動かし――その間合いを詰めてくる。


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