シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


もしかして…

あたしの体重が重すぎるから、桜ちゃんの腕を心配しているとか?


え?


桜ちゃんの抵抗がなくなってきたのは、玲くんや由香ちゃんが渾身の力でねじ伏せているからではなく…

あたしの重さ!!?


もしかして、あたし玲くんに――…


"桜に何ひどいことをしてるんだよ"

"そこまで拷問じみたことしなくてもいいだろ!?"


とか、怒られてる!?

あたし、そこまで凄く太った!?


「……違うよ、神崎。師匠は葉山に妬い「さあ、桜。飲み込め!!」


由香ちゃんの声を遮って玲くんが叫んだから、由香ちゃんが何を言おうとしたのかは判らなかったけれど。


玲くんは首から外したその手を桜ちゃんの背中の下に潜らせると、くいと桜ちゃんの体を反らせ…軽く喉元をぽんと手で叩いた。

ごくん。


そんな音が聞こえた気がした。

桜ちゃんは反射的に飲み込んだようだ。

目を白黒させて、びくびくと体を痙攣させる桜ちゃん。


「大丈夫…桜は負けない…」


まるでそう信じたいかのような玲くんの固い声に、あたし達は祈るような心地で桜ちゃんを見つめた。

激しい痙攣も、少しずつ落ち着きを見せている。


「脈拍も落ち着いてきた。不整脈も出ていない。…もういいだろう、あとは時間の問題だ。

ということで、桜から離れていいよ。というより早く離れて」


少々ぶっきらぼうにも聞こえる玲くんの声。

玲くんは桜ちゃんのお腹あたりに馬乗りになったまま、あたし達だけを桜ちゃんの手から外させた。


「芹霞はここ!!」


玲くんは手を伸して、彼の横の床を、ぽんぽんと叩いた。

それは桜ちゃんの腰の位置。

どうしても桜ちゃんの手から、あたしを離したいらしい。

2回では気が鎮まらないのか、その後5回も床を叩いていた。


やっぱりあたし怒られているのかも…。

桜ちゃんに悪いことしちゃった…。


そう消沈したあたしは、まずは桜ちゃんに謝ろうと、その顔の横に座り込んだ。

そして、まだ苦しそうに顔を歪めている桜ちゃんの両頬を、手ですりすりしながら謝罪する。


「桜ちゃんごめんね…。あとで桜ちゃんの腕を念入りにマッサージするから。ひと晩中、あたしをずっと専属マッサージに使って良いから……いっ!?」


突然の太股の痛みに、慌てて見たら…。

化け猫が、真っ赤な目をして、あたしの太股にかぶりついている。

いつの間に一緒に移動してきたんだ?

というより…あたしは百合絵さん並の肉の塊化してるのか!?
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