シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「あ、あの……」


ドアを閉めた玲くんは、あたしを担いだまま机の上に腰掛けた。

そして膝の間に、あたしを後ろ向きに座らせると、


「!?」

脇の下から手を伸し、うしろからぎゅっと抱きしめてきた。

突然の熱い温もりに、あたしの心臓が驚いたように早く打ち付ける。


「れ、玲くん?」


身動きすら許さない、強引な抱擁。


目の横でさわさわと揺れるのは、玲くんの髪の毛。

耳に感じるのは、玲くんの熱い吐息。


「……のに…」


何かが漏れ聞こえた。


「我慢してるのに…」


そして、玲くんの頭と手が動いたかと思った時、


「!?」


持ち上げられた髪の下、熱いものが首筋にあてられて。

音をたてて、強く肌を吸われていく。


「……っ!!」


そこから火傷しそうな灼熱が体に拡がっていき、思わず声を漏らしてしまう。


「君は…僕のものだ」


今度は、濡れた熱いもので舐め上げられる。

ぞくぞくした感触に、あたしは崩れ落ちそうになり、思わず玲くんのスカートを握りしめた。

痺れるような感覚に、口から出るのは、


「あ……っ…」


まるで桜ちゃんのような声だけで。

それが何だか恥ずかしくて、いやいやと首を振って抵抗したけれど、玲くんはやめない。


「意識するのは…僕だけにして」


耳元に囁くような声。

甘い声音の中に…微かに感じるのは怒り。



「浮気は許さない」



言葉が終わると同時に、首に痛みが走る。

思わず涙目となり、短い悲鳴を上げてしまう。


「れ、玲く…あたし、浮気は…」

「許さない」


そして体が持ち上がり、くるりと向きを変えられた。

玲くんの真っ正面に。


乱れた前髪から覗くのは、静かに怒りを湛えた鳶色の瞳。

格好は女子高生なのに、その顔は…真剣な男の顔で。

冗談ではすまないような、そんな危険性を秘めていて。


「君の恋人は…僕だろう?」


苛立たしげに、更にその瞳が細められた。


「それなのに…僕の前で、堂々と浮気なんてね…。僕以外の奴に…男を感じて、体に触れさせるなんてね…」

「ちょ…待って!! あたし別に浮気は…」

「僕…、笑って許すとでも思ってた?」


待て待て待て!!!


剣呑な会話の流れに、あたしから汗がたらたら流れる。


どうして"浮気説"が浮上するの!?

あたし、玲くんの目の前に居たじゃないか!!

浮気って、一体誰とのこと!?

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