シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「乱れてさ…君を壊してもいい?」
吐息のような声が漏れ聞こえてきた。
「…僕だけのために、壊れて?
僕がいないと生きていけない体になって」
玲くんは再び啄むようなキスをした後、あたしの唇を甘噛みして。
そしてとろりとした目をして、濡れた舌であたしの唇を舐めた。
唇の狭間に舌を差込み歯列を舐めると、妖艶な眼差しで微笑む。
そしてその目はあたしに向けたまま、銀の糸を垂らす舌を引き抜いて、囁いた。
「……ねぇ、もっと深く入れてもいい?
……君の熱いナカに」
どこまでも扇情的に。
「1つに…繋がろうか」
ぼんっと…爆発音が聞こえたように思った直後、催眠状態のように朦朧としていたあたしの頭に、雪崩れ込むようにして理性が戻ってきた。
入れてもいいって――
一体何ですか!!!?
何処に何を深くいれて、繋がるつもりですか!!?
おねだりするような、そんな流し目で、一体何ですか!?
自分がせがんだことは、はるか意識の彼方。
玲くんの色気と言葉に完全にノックアウト。
「芹霞……? あ……。目を回してぶっ倒れちゃった…」
許容量オーバー。
完全にオーバー。
「ふぅ…っ。ようやく、降参してくれた…。芹霞が…色気だして"誘う"スキル持ち始めたとは…。何だよ、この状況…。今でさえこんなに我慢しているのに…それは反則だって…。ここで安易に手を出したら、絶対僕…途中で止まる自信ないし…。止まらなかったらきっと怖がられるし。しかもこんな時、こんな処で。あぁ…僕をどうしたいんだよ…。大切にしたいと思っているのに…」
何処か遠くで、玲くんの嘆きが聞こえた。
「いつまで僕主導でいけるのかな…。やばいな…僕の理性、あとどれくらいもつんだろう。……はぁ。表情だけでやられそうだから、芹霞を早くいつものように沈めようとしたのに…、僕が……欲しいだなんて」
嬉しそうな…そんな声が聞こえるのは幻聴だろうか。
「場に流されてたのは判る。だけど…前進だよな。とりあえず"対象"にはなっているよな? ああ…駄目だ。動揺しすぎて…1人でぶつぶつ…変な奴みたいじゃないか。まずは深呼吸…。……。1回限りじゃないよな。これからもせがんでくれるよな? そうじゃないと、僕…何の為に今我慢したのか…。こういうのはもっと落ち着いた時に……。……。やばい、思い出したら…顔が弛んで…。……っ」
薄れる意識の中、ノックの音の後ドアが開く音がして。
「師匠!! 葉山が……って、師匠、なんで顔真っ赤で悶絶しているんだ!!? まるで如月のようだぞ!!?」
何だか由香ちゃんが騒いでいた…気がした。