シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

覚悟 桜Side

 桜Side
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夢を見ているのだと思った。


体の自由を奪われ、思考すらうまく働かない。

自分の体なのに自分の体ではないような…持ち主である私が統制出来ない体は、私の体ではないか、或いは…ここは夢なのだと。

頭の中に、ずっと"かごめかごめ"が回っている。

後ろを振り返った時…いた着ぐるみ姿の子供のことを思い出しながらも、私はそれに対して…警告の言葉すら口にすることが出来ず。


ゆらゆらと…重い思考と体は揺れるばかり。


まるで映画かなにかの映像を流し見ているかのようだった。

そう悪夢のような…そんな映像。

私の思考を超えた処で自動再生され、私は観客気分だった。


私は玲様を襲っていた。

その感触は、記憶として脳裏に焼き付いているというのに、不思議なことに、目の認識というより…耳で"見ていた"ような感覚だったんだ。

触覚も視覚も…全てが聴覚が司っていた。

この不可解な揺らぎは…私の"耳"がどうにかなっているせいなのだろうか。

私の体なのに、私はよくわからない。


ゆらゆら、ただ私は揺れて。

ありえない悪夢に流されるばかり。


ありえない。


そうだから、この状況は――

現実ではないと思ったんだ。


夢。

どこまでも悪い…ただの夢。


だけど、おかしな高揚感が猜疑心を強めた。

冷静な私が起上がった。


それは閃光のような一瞬。


"目覚め"にも似た現実認識をした途端、複雑に絡み合った思考の糸が少しずつ解けていったように思う。

目覚めても悪夢は止まることはなく。



視界に拡がるは、無防備な玲様の首。

私は裂岩糸を向けていて。


悪夢ではなく、本当に現実なのだと再認識したんだ。


なんたること!!


私が!!

この私が!!


玲様に手を上げているのだと、判っているのに…体が止まらなくて。

私の体なのに…私の意思に従わない。


玲様、玲様、玲様!!!


玲様は動かない。

私を、全面的に信頼しているのか。


駄目だ、このままでは!!

自制出来ない私は玲様を…!!!


そんな時、芹霞さんの姿が見えて。

芹霞さんが玲様を庇う姿を見て。


私は――

――桜ちゃん、駄目ぇぇぇぇ!!

涙を流した。


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