シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
頭に響くんだ。
――願い求めよ。
呪いのような言葉が。
――さすれば汝に、それを与えん。
この声音は、あの子供。
ああ、僕は――
強くなりたい!!
己の心に惑うことのない、ぶれない強さが欲しい!!
そんな時、声と足音がした。
「桜!!!」
それは、芹霞さんを両腕に抱いた玲様の姿。
芹霞さんを横におき、玲様は片膝をついて僕の顔を覗き込んでくる。
「桜、大丈夫か!!? 体…おかしなところはないか!?」
憂慮の色を濃く映す鳶色の瞳。
こんなに…心配をかけているというのに。
なにを…僕は…私は!!!
心を占めるのは罪悪感。
犯した罪の大きさに、息が出来なくなって。
「玲様、申し訳ありませんでした!!!」
私は、額を床に擦りつけるように土下座をした。
顔を合わせられるような立場じゃない。
「玲様に手を上げるなど…あってはならぬこと。
どうか…警護団長の職を解いて下さい!!」
責任を取らねばならない。
私は、玲様を二重で裏切っていた。
肉体も心も…確かに玲様に敵意を向けていたんだ。
こんな形で離れるのは、不本意だけれど…それが私の…。
「桜、顔を上げて」
「いいえ、玲様」
「桜」
「それは出来ません!!」
「……上げるんだ」
玲様の声色が急に低くなり、私は恐る恐る顔を上げた。
私を見ていたのは…えげつない顔をした端麗の顔。
ぞくりとした。
拷問でもなんでも、受ける覚悟は出来ている。
それだけの重罪を、私は犯したのだから。
何年も同居して親しくさせてもらっていたとはいえ、明らかに刃向かった事実があるのに、何もなかったような顔をしてのうのうと傍にいられる程、私の神経は図太くは出来ていない。
臣下として人間として、信頼を裏切ったことに対して、どうすべきかくらい、その身の振り方は…私はわかっているつもりだ。