シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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持てる情報を話し終えた私の前に、ずらりと3人全員が並んでいる。


――桜ちゃん、なに正座してるの!?

――そうだよ、葉山。君が責任感じることないじゃないか!!

――お前がその座り方をするなら、僕も。


反省点が多々ある私が正座をするのは、当然のこと。


知らなかった、操られていた…そんなものは所詮言い訳で、それに打ち勝つことができなかった"弱さ"に、私の非のひとつがある。


私は、何度怒ってもさっぱり反省も学習もせず、すぐに足を崩してくつろごうとする、あの馬鹿げた犬ではない。


しかし畏まることを是としない彼らは、私にやめさせようと、皆揃って正座を始め…、かつて芹霞さんが入院していた病室内の客間の床に、全員が座り込む…お見合い状態。


馬鹿蜜柑から私は頑固だとよく言われるけれど、彼らだって頑固だ。


私は正座以外の座り方をしたくない。

それだけのことをしでかしたから。


だから心ならずも、結局全員が正座し続けている。


「ニャア」


……"全員"の数にしていないことは声にしていないというのに、省かれたことに不服そうなネコの声が響いた。


「ニャア」


芹霞さんが撫でていた、膝に置かれたバックから飛び出ているもの。

肉球や耳らしきものまで見えるそれらの白いふさふさは、ネコを模した飾りではなく――

多分、紫堂本家に飛び込んで来た…あのネコそのものなんだろう。


私の記憶がない間に、どうしてこんな姿になってしまっているのか。


バックと一体化した…奇妙すぎる白いネコの面影を残す、多分…まだかろうじて人間界の生物。


"それ"自体も私以外の人間も、その姿にさしたる疑問を覚えていないようで、至って普通にその現実を受容しているのが異様だ。


「ニャア」


姿が変わっても、ネコの不遜な態度は変わらない。


こんな姿になっていなくても、自己主張の強いこのネコは、正座など殊勝なことはしないだろう。


まあ…やる必要もないし、所詮はネコだし、仮に正座したら、出来たという事実だけで吃驚だ。


あの馬鹿犬が試験で満点をとる並に、センセーショナル。


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