シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
そして――
そうした流れの中で、動き始めたのが久涅と黄幡会。
それはどうやら、"サンドリオン"と関係あるらしい。
久涅とディレクターたる計都と接触したクオンに、黄色い蝶の鱗粉がついていたという。
それを誘発したのが――
「芹霞が見たというウサギの着ぐるみの子供というのは、桜が見た子供に間違いないだろうね。だとすれば――」
"マスター"。
黄幡会の最高地位に居て、以前計都が腕に抱いていた幼い子供。
噂では、黄幡一縷の記憶を持ち、奇跡を行う力があるという。
その子供は、"かごめ"を歌う。
"マスター"、"ディレクター"という上層部が動き始め、そして"エディター"たる上岐妙は…妊娠しているらしい。
相手は不明。
やはり、馬鹿蜜柑と木場の地下で会ったあの女は、本物の上岐妙ではなかったらしい。
妊娠したという彼女が、本物であればの話。
さらには10年前、彼女はすでに死んでいた…という、三沢玲央の証言もある。
いまだ、上岐妙の正体が掴めない。
そして、久涅が計都とともに行動していたということは、彼らは繋がっているのだろう。
五皇のひとりの黒皇たる久涅。
ならば、計都を傍に置くのは…必然。
さらに繋がっていたのは、彼らだけではなく――
「"マスター"と共に居た副団長は…繋がっているということになる」
副団長もまた無関係ではないということ。
過去紫堂当主は黄幡会の者達と現れ、さらに久涅が手元にいるのなら、当主個人と黄幡会との繋がりはあるのだろうと予想はしていたけれど、副団長までとは…正直思ってはいなかった。
警護団において、私に次ぐ地位にいる童顔の男。
いつもへらへら笑っているかのような印象しかなかった男。
信頼していたわけではなかった。
それでも、警護団が当主の命を受け手櫂様の追手となった時、櫂様と共にいられる私を羨み、逃げられる時間を与えてくれたことは評価していたつもりだ。
その彼は、玲様が次期当主になったことを快く思っていなかった。
だとすれば、副団長が私を襲ったのは…当主の命令でというより、彼個人の意思による行動ということなのか。
玲様救助で紫堂本家を走り回っていた時に襲ってきた、耳に針を入れて異常に興奮したような紫堂の警護団員を操っていたのは…恐らく副団長。
彼が扇動したとしか思えない。
完全なる紫堂の裏切りだ。