シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
知らなかった。
彼が黄鉄鉱(パイライト)という守護石を持ち、針に顕現出来ることは。
私と同じ、団長レベルの力があると…私はそこまでの実力の持ち主だと思ってもいなかった。
過小評価しすぎていた。
つまり、副団長を野放しにしていたのは…。
「私のせいだ…」
見抜けなかった私の失態。
おまけになれば、彼に操られる始末。
これで団長など、情けなくて溜まらない。
「桜のせいじゃないよ。司令官たる僕が…不甲斐ないからだ」
そう自嘲気に吐き捨てる玲様の顔は翳っていた。
「櫂が次期当主なら、こんな反乱は起きなかっただろう」
――いえ。愚弄ではなく、案じているのです。櫂様は紫堂の空気を弾くだけの力があった。しかし玲様は…弾かず、受容なさっている。これでは…紫堂の未来はない。
私の頭に、副団長の言葉が巡る。
前団長であった私の父親の相棒だったらしい彼。
紫堂の未来を憂う故に紫堂を裏切った。
そう考えるのが自然だろうけれど、なにかひっかかる。
……そうだ。
副団長の謀反を実行するまでの動きを私達が見過ごしていたとしても、当主が見過ごすはずはない。
まして実際に動き始めたことを、当主が感じられないはずはない。
だとすれば――。
「玲様、副団長の行動は…仕組まれていたのでは」
次期当主が玲様だから起きた反乱と考えれば、玲様は責任をとって肩書きを剥奪されるかもしれない。
これは副団長の単独行動ではなく、やはり当主に命令されていたのでは。
玲様の抵抗する力を削ぐために、警護団は…当主によって言い様に使われていたのでは。
そう思えてしまうんだ。