シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

「紫茉ちゃん達、桜ちゃんが神崎家にいると思って行ったんだから、神崎家に行けば会えるかな」

「あの…どうして私が神崎家に?」


素朴な疑問を投げかけてみた私。


「あれ、なんでだったけ、由香ちゃん?」

「ん……。……。…あ、思い出した、氷皇の青い手紙に書いてあったんだよ。朱貴がシャワー室で拾ったという…。たしか…袋に…」


がさごそと、銀色の袋を漁った由香さんが満足そうに、1つの青い紙を取出すと、玲様の顔が思い切り嫌悪に歪んだ。


『ミス桜華のレイチャンへ

10:00に予約しているからね☆

受付で名前を言ってね~。


《桜チャン情報~♪》

芹霞チャンの家付近でう~ろうろ☆

何をしてんだろうね~?


あ、それから振り込みありがとう。

実はね、


…続きは、待て次号!!!
☆⌒ヽ(´ε`)チュッ(´з`)ノ⌒☆』



「改めて見るとさ…」

「ん、由香ちゃんの言いたいこと判る。やっぱ『待て次号』が気になるよね。考えてみれば、これの次号はまだ貰ってないよね。とりあえず、この"チュッ"はいらない」

「次号もいらないよ、僕!! 定期購読なんかしないからね!!」


私の知らない間に、青い紙はまた玲様に届いていたらしい。

氷皇はまだまだ、玲様に青い手紙を送りたいらしい。


――あははははは~。



青色をみるだけで、うんざりだ。


「どうやって紫茉ちゃん見つける? 玲くん、紫茉ちゃんや紅皇サンの気配って、ここから判る?」


「流石に無理だ。……。だけど、朱貴だったら、芹霞の家に桜がいないと判り僕達と連絡が出来ないと悟った時点で、考えるはずだ。まずは、僕達が赴いた塾に行こうと」


「だけどあの塾…」


「ん、だからそこで察するはずだ。僕達の行動を」


「「へ?」」


「早かれ遅かれ、最終的に僕達は九段下の更正施設に赴くつもりだということを、朱貴は知っている。だとすれば、現地にいるはずだ」


鳶色の瞳が、鋭い光を放つ。


「ウチの前にまだいるとかは? 紫茉ちゃん達が普通に元気だったらの話だけど……」


「僕は、氷皇に時間を大切にしろと言われた。だから桜を探しに行きたくても、氷皇に従って渋々塾に行ってたんだ。朱貴達に桜を託して。だとしたら、氷皇が動いている限り僕達は、自分達で選択したルートの先に進むしかない…朱貴ならそう読むだろう」


「成程ね。時間無駄にしたら、師匠…3倍ほっぺだものね」


感嘆交じりの遠坂由香の声に、玲様は引きつった顔で返していた。

3倍ほっぺ?


「行こう、塾の後に九段下へ。もたもたしてると、また敵が襲ってくる。あの朱貴の偽者だって、動かないのはおかしいし。敵は様々だ。奇襲される前に、早くここを出よう」


玲様の声に、私達は頷いた。
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