シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
『ジキヨクナール』が蠱毒…。
それがどういう意味か判るのは…九段下にある自警団の更正施設。
朱貴は、一体何を知り、玲様達に示唆していたのか。
なんでそんなものを、七瀬紫茉は必要とするのだろう。
――そんな時だった。
「「何この音!!?」」
女性陣をびくつかせる、電子音が鳴り響いたのは。
"LOVE is OVER"
更には、流暢な発音の女声。
「僕のGPSが切断された!!」
それに呼応したのは玲様で。
「陽斗を追跡してた奴か!! 師匠の携帯…そうだ、あの青いワゴンから移動する時、確か銀の袋に入れて…あった!! はい」
何でも出て来る銀色の袋。
玲様は遠坂由香より白い携帯を受け取り、画面を開いて覗き込んだ。
「やっぱり。陽斗の持っていた、芹霞の古い携帯のGPS機能が切られ、僕の追跡アプリが強制終了した音だ。陽斗がいた最後の、この位置は…」
そして玲様が携帯をいじりながら言った。
「東京ドーム付近…水道橋か。水道橋は…塾の特待生のための施設がある場所だったはず…。そして、九段下の近くでもある。
偶然か、必然か…。結局の処陽斗は何処に行き着こうとしているのかも判らないけれど、陽斗は…闇雲に移動しているわけではないと思う。その軌跡はデータとして残っているから、後で見よう」
「水道橋に行くかい、師匠? 陽タンを捕まえるか?」
「陽斗のことは気になるけれど、今は朱貴達と合流するのが先だ。氷皇にまた何か言われてされるのも癪だから、特待生の手続きだけをさっさと済ましてミッションを終了し、九段下に向かおう。途中、百合絵さんにも連絡を取ってみよう。百合絵さんのスマホ、通じるといいけれど…」
そうして玲様は、白い携帯を操作して耳に当てた。
「百合絵さん、スマホなの!? あたしだってまだガラケーなのに!! 由香ちゃんだって玲くんだってそうなのに!!」
「…ボクがガラケーなのは、プレゼントされたからで…、師匠がガラケーなのは、神崎とお揃いにしたいからだよ(ぼそっ)…」
遠坂由香がなにやらぶつぶつ呟いていたけれど、それは芹霞さんにも玲様にも届いていなかったようだ。