シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
彼女は入院中、ほぼ毎日…"借りた"自転車で、花を手向けに陽斗の墓まで通っていた。
それを迎えに行くのは、私達だった。
担当医として芹霞さんと同じVIPの病室で暮らされていた玲様が、少し席を外した隙に、
『陽斗に会ってきます』
という…あまりにも不安を誘う置き手紙を突如残して、病室を抜け出した芹霞さん。
その頃の芹霞さんは、陽斗のことを知り精神的にナーバスになりすぎていたから、直後訪れた私達と共に、血眼になって芹霞さん捜索を開始した。
芹霞さんを見つけ出したのは、玲様の携帯の…GPS追跡機能。
玲様はいつの間にやら、追跡対象に新たな芹霞さんの携帯も登録していたらしく、それは毎度…雑司ヶ谷の墓場で止まって表示されることとなった。
病院から雑司ヶ谷の墓場までは、普通人の徒歩で10分程度。
それが、芹霞さんの体力が回復していないのに移動時間が段々と短くなって5分程度で行き着くことが出来たのは、自転車という道具を利用した上で更には近道という裏道を見つけたかららしい。
それを考えれば、今、出来るだけ早く用件を済ませたい私達にとっては、芹霞さんに先導されるのがベストだとは思うが…。
シャコシャコシャコ…。
私が自転車を運転するか、芹霞さんを抱えて屋根伝いを走る方が、体力的にも余程効率が良いような気がする。
――桜ちゃんは、どどんとあたしに任せて、後ろに座ってて!! はい、ここ!!
だけど、頼られたいのか…芹霞さんの嬉しそうな顔を見ていると、それも言えなくて。
――後ろから変な敵が来たら、桜ちゃん対処してね? お願い。あたしはひたすら"足"になって頑張るから、桜ちゃんは"手"になってね!! 頼りにしてるよ!!
頼られるのは…確かに嬉しいことだから。
――足……。全速力で漕いだら、運動不足のあたしの足…ほっそりするかなあ…。……。すごく強くなって、玲くんみたいにとりゃあって回し蹴りも決めれるようになったりして。うふふふふ。
…その前に筋肉痛になって動けなくなるとは考えてはいないらしい。
――ではでは、桜ちゃん後ろはよろしく!! 前には火炎放射ネコ、アーユーレディ?
――ニャアアアアン!!
………。
化けネコは、英語も理解出来るらしい。