シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ねぇ桜ちゃん。桜ちゃんと行動するのって、S.S.A以来だね」
シャコシャコシャコ…。
あそこに……自警団が居る。
私はポケットの中の黒曜石を指で触った。
視界の中だけでも、6人。
こちらを見ながら携帯を弄っている。
私を"ガイダー"として特別視していた以前を思い出すが、今、根拠となった青い服は着ていない。
約束の地(カナン)にて着替えてしまっていたから。
対外的に自警団を制するものがないのだとすれば、穏便にやりすごすことは出来ないようだ。
警戒に顔を強張らせていたそんな時、耳に届いた芹霞さんの声。
自警団には気づいていないらしいけれど…。
「あの時もすごく心強かったよ、あたし。桜ちゃんは男の子だって、すごく感じたよ」
………。
どうしてこの人は…。
ボクヲミツケテ。
モットモットボクヲカンジテ。
「ツインテールの桜ちゃんも可愛いけど、短髪の今の男の子バージョンの桜ちゃんもすごく格好……」
――駄目だ!!
「静かにして下さいッッ!!」
私は目をぎゅっと瞑り、頭を振りながら声を荒げた。
芹霞さんの視線を浴びない、後ろでよかったと思う。
「……自警団が走ってきてます。排除しますから」
「自警団!? 頑張って漕ぐよ!!」
ジャコジャコジャコッ!!
さらに音はおかしな響きになっていたけれど。
切なくなる。
約束の地(カナン)の時から"男の子"であったと認識されても、ただそれだけ。
見世物小屋の住人のように、興味を引くことが出来ても…ただの世間話のように、簡単に過ぎ去るだけ。
進みはしない。
――玲くんが好きです。
玲様には…違ったのに。
――あたしは、紫堂櫂を愛してる!!
櫂様に感じていた"異性"の香りを、玲様に感じているのか。
私からは感じ取れない…その香りを。
「――っ」
後部座席に立ちあがった私は顕現した裂岩糸を放ち、脇道から飛び出した自警団を掴んで、地面に叩き付ける。
「とりゃあああああ!!! とにかく突っ走るのみ!!!」
ジャコジャコジャコッ!!
自警団同士、連絡が行き渡ったのか。
至る処から自警団が待ち伏せして私達を捉えようとする。
その連絡網と包囲網は侮れない。
「うぎゃああ、あっちから自警団わんさか!! 違う道……根性の90度右折!! 行け~、玲くんほどではない……自転車ドリフト~!!!」
減速しないまま、自転車が右の細道に突き進んだかと思うと。
「うぎゃああああ、うそ~、下り階段!?
うっ、ひっ、ぎゃっ…」
突如視界が、ガクガクと不安定になる。
「駄目だ、ハンドルとられて…体が飛ばされちゃう…!!」
「フギャーー!!」
化けネコが呼応するように、絶叫した。