シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「芹霞ちゃん。あのワンワンって…」
その中に見覚えがあった僕。
「うん…あのワンコ、あたしと櫂が捕まえて、イチルちゃんが連れて帰った…あのワンコだよね?」
イチルちゃん、逃がしちゃったんだろうか。
だけど、何でお墓でぐったり?
「あのワンワン…どうしたの? おねんね? 具合悪いの?」
「ん…どうしたんだろう。動かないね。ワンコお食事中だったのかな…。お肉の塊が遠く離れて置いてるね。
…ねえ、あのワンワン達…やっぱりイチルちゃんが飼っているのかな。イチルちゃんの大好きな"黄色"の首輪してる」
そして――
黄色い首輪から伸びているのは鎖。
長い長い鎖。
鎖の先には誰がいるの?
「櫂、あれなんだろう」
芹霞ちゃんと同じ方向を見た僕は、首を捻った。
「何で――
大根に繋がってるんだろう」
葉っぱの部分に、沢山のワンワンからの鎖が巻かれていて、それが地面から引っこ抜かれている。
ワンワンはきっと――
「大根堀りをしてたんだよ、芹霞ちゃん」
「そうか、大根掘りか!! 櫂、頭いいね」
「えへへへ…」
僕は芹霞ちゃんに褒められて嬉しくなった。
だけど何だか…気持ち悪い大根だ。
泥だらけの根っこは"足"みたいに先が割れていて。
今にも歩き出しそう。
膨らんだ上の部分が女の人の"胸"みたい。
……だけど頭に葉っぱついてるから、やっぱりこれは大根で。
うん、大根。
………。
「ねえ…櫂」
「ねえ…芹霞ちゃん」
何で――
「「お墓に大根??」」
僕達は首を傾げた。
「ふふふふふ」
その時笑い声がして、振り返るとイチルちゃんが立っていた。
イチルちゃんは、その大根の葉っぱを手で持ってじろじろ眺めると…
「さあ――
魔法を見せてあげるね」
そう言って、大根を手にしていた袋に詰め、僕達を誘った。
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