シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「俺には俺のやり方がある。お前さん達がここの夢路…もとい"こけし"達を扇動出来なかったら、また別のやり方を考えたさ、がははははは!!」
"こけし"という名前をわざと出したのは、この画面で見ていたのだといいたいんだろう。
どんな過程を経たにしろ、今こうしてここに来た事実だけで、結果オーライ。
そんな楽天的なクマに、こいつを案内役にした氷皇を恨みたい気分。
櫂はどう思っているんだろう。
櫂は端正な顔を少し歪ませて、複雑そうな顔つきをしているものの、少し妙な目の動きをしている。
真っ正面のクマを捉えずに、その後ろにある機械をに目を配っているようだ。
玲の血を引くから、この機械の意味が判るのか…とも思ったが、どうもそうではないらしい。
櫂は思いきり顔をしかめて、今度は険しい顔つきをしてクマに言ったんだ。
「クマ、そこを消せ」
と。
クマは腕組みをして、愉快そうに櫂を見ている。
こけしもまた、薄い笑いを浮かべて櫂を見ている。
「ここの機械を消したら、この世界の均衡がとれなくなってしまう」
そうクマは言ったが、
「電力の供給は、そこからでなくともとれるはずだ。電気の無駄遣いだ。元あるものに戻せ」
そう言うと溜息をついて、櫂は苛立たしげに髪を掻上げた。
煩悶した表情で。
「櫂、なんだよ。何が出て来るっていうんだよ」
「感じるだろ、この気……」
切れ長の目は苦しそうに伏せられて。
気……?
確かに、何かの気配がある。
櫂でもクマでもこけしでもねえ…、この気……。
それはまるで――。
「!!」
思い至ったひとりの人物。
完璧そいつのものとはいえねえ微妙さはあるけれど、構成されているのはほぼ"あいつ"の纏う気で。
繊細で壊れそうで…だけど鋭く。
「まさか……玲!!?」
しかし櫂は頭を横に振る。
「玲ではない」
「だけどこれ……」
「玲としてしか思えないのは、俺達が玲のそばに長くいすぎたからだ」
「は?」
櫂は、一体何を想像しているのか。