シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「この機械を構築したのはクマではない。こんな特殊な世界に、これだけの機械を動かせる"電力"はない。あるのだとすれば…発電所並に、"生み出せる"ことが必須だ。クマには…その力はない」
否定されたクマは、静かに笑うだけ。
その控え目な微笑みは、ふと玲を彷彿させた。
「ただ、お前は玲と無関係ではない。その姿に惑わされ、また玲の長年の知り合いだということで特別気にかけていなかった。だから、今まで気づかずにいたんだ」
切れ長の目は憂いを帯びる。
なんでこんな表情をするんだ?
「ほほう、俺は…白き稲妻とどんな関係があると?」
「その前に、それを消せ。もう隠さなくていい。俺は長く玲のそばで、……あいつの力を感じてきたんだ。それに一度疑って走査を始めたら、誤魔化しはきかない。その奥に…居るんだろう?」
「奥!?」
正面の壁には、機械しかない。
どう見ても奥などありえない。
これは完全に行き止まりで――
「あ!!?」
は、なかったんだ。
消え行くのは光だけではなく、機械の姿までも。
壁のように並んでいた機械が薄らいで消えて行き、出て来たのは――。
「白壁と……ドア!!?」
「ああ、ここの機械は幻影……いや映像と言った方がいいか」
そして櫂はすたすたと歩き出す。
「お、おい、櫂……」
慌てて俺は櫂の後をついていく。
「煌。…何が出て来ても、取り乱すなよ」
「……。わかった」
そしてドアの前に立つと、自動でドアが横に開いた。
「あああああああ!!?」
櫂に忠告された言葉を守ったのは1秒足らず。
仰け反るようにして俺は取り乱した。
「なんだこりゃあああ!!」
そこは、宇宙空間(サイバースペース)とでもいうべきもの。
真っ暗の空間に無数に浮かぶ、蛍光色の緑色が、何かの波形を作りながら消えて行く。
幻想的な、果てなく拡がる空間。
何でドア開けたら、こんなになってるよ!!?
「まだまだ、これからだ」
そこに意味するものを口にせず、笑いながら櫂は俺の腕を引いて歩いて行く。
真っ暗な空間の中、俺と櫂は、全身に蛍光塗料を纏ったかのように淡く光っている。