シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
血の繋がる者だけが感じる特有の何かだろうか。
櫂の身に危険が起きている…のだろうか。
「煌…守れよ。きっちり守ってくれよ…」
どこにあるのかも判らない裏世界。
僕はただ…祈るしかない。
無事に再会出来ることを。
その為に僕達は今、"強さ"を求めてもがいている。
嫌な予感を抑えながらも、僕は由香ちゃんとまずは水道橋に向う為に、駅に向っていた。
さすがに乗り捨ててきた、あのZodiacの宣伝デコトラには、また乗りたくない。
他に車…と思っても、走行車の影はなく、仕方が無く大通りに出てきたのだけれど、人影はおろか…やはり車が見えない。
移動手段を考えて時間を食うのも馬鹿らしいから、いっそ公共の電車を利用してみようかと由香ちゃんと話し合っていた時、何処からか…男の怒鳴り声が聞こえてきた。
「これは、定期メンテから返ってきた俺の相棒だ!! この野郎、俺の相棒に触るんじゃねえ!!」
僕は由香ちゃんと顔を見合わせ、そしてその声が聞こえる先を探した。
その方向は、配水管の工事現場としての名残がある場所に近く。
働く人が見えないのは、休憩なのか何なのか…。
無造作に、『安全第一』と描かれたヘルメットが、数個地面に転がっている。
その影から、声は聞こえてくるようだ。
僕達は、こっそりそれを覗き見た。
そこには自警団に絡まれている、白い長丈の――…
「あの金髪頭!!! 陽タンかい!?」
「いや違う。見てご覧、あの背中…"玄武参上"と描かれている。いくらなんでも陽斗は、あんなに趣味悪くないよ。あの服は…特攻服だ。"玄武チーム"に居るんだろう」
しかし――。
「…馬鹿だねえ、自警団がいる今、あんな服で堂々と東京歩くなんてさ…。なんでわざわざ…」
呆気にとられたような…由香ちゃんの溜息交じりの声に、同感した僕は深く頷く。
「何と言おうと、これが俺のスタイルなんだ!! だから相棒に触るなと言ってるだろうが!! やる気かゴラァ、かかってこいや!!」
相棒とは…、多分、男の影にある大きなバイクのことだろう。
自警団は2人、男は1人。
自警団はひ弱そうな男女で、喧嘩をしたら金髪男の圧勝に思えるけれど…。
だから啖呵を切ったのだろうけれど。
「馬鹿だよねえ。自警団には…ネットワークがあるのにさ」
更に由香ちゃんが大きな溜息をついた時、案の定…至る処から、駆け足でわらわらと駆け付けてくる自警団。
強気に出ていた金髪男は一気に取り囲まれ、じりじりと後退始めた。
「やばいよね、師匠。あれ絶対更正施設行きだよね…」
「うん。間違いなくね…」
………。
「なんとかしてあげないとね…」
僕は由香ちゃんに、にっこり笑った。