シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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ブォォォォォ。
「師匠……」
「ん……?」
「確かにボクさ、師匠のその髪は天然色でお天道様の元では染めているように見えるから、黒髪のカツラを投げ捨てたのは痛いね、自警団にイチャモンつけられるかもねって言ったけどさ…」
「ん……?」
「だけど、このバイクに二人乗りっていうのは…もっと目立たないかい?」
「そう…? だけどバイク乗らないで、髪を誤魔化すために、『安全第一』と描かれたヘルメット被って歩いているというのも、おかしくない?」
「確かにそれもおかしいけど、だからといって…このヘルメットにこの組み合わせというのも」
「安全第一じゃないか」
「いやまあ…そうなんだけど、あまりにミスマッチすぎるというか。しかもさ…これ…」
僕が運転しているのは、750ccバイク。
形からして明らかに改造版。
はっきり言って趣味が悪い。
色は、記憶の"誰か"を思い出させる橙色と黒のマーブル模様。
そして大きく筆文字で書かれた、"四神会 玄武参上 Ⅱ"。
「四神会って、芹霞のカラオケ仲間の組長さんが率いる仁流会下の暴走族だね。池袋は北だから、玄武なのかなあ。Ⅱということは2号機みたいだね」
「突っ込むのはそこかい、師匠」
「あはははは。由香ちゃん。僕達は人助けをしたんだ。僕達がいなかったら、彼は更正施設行きだったんだよ? どんなバイクにしろ、彼の善意で御礼にとこのバイクを捧げられたら、断れないだろう? それに丁度僕達、移動手段が欲しかったんだし。ギブアンドテイク、助け合いさ。まだまだ東京も捨てたものじゃないよね」
「……。にっこり脅して御礼をせがみ…かっぱらっただけとも言う…」
「ん? 何か言った?」
「ううん、何も。しかし…彼、おかしなこと言ってたよね」
――伝説の"狂犬"さんに献上した"前代"の代わりに、定期メンテ終えたばかりのこれまで無くなっては…!! あれだってローン終わってないから、今度は小型にしたのに…これでは2台分のローンだけが残ってしまう!!!
「2台分のローンが何だっていうんだよ。僕なんて…」
――あはははは~!!
手元に残ったのはバッチ1つ。