シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
七不思議のひとつ=サンドリオン=黄幡祭。
楽園に導く羅侯(ラゴウ)降臨に必要な儀式。
――黄幡祭までに…運命の相手を見つけてね。
――黄色い蝶に気をつけて。あれは、黄幡祭…"サンドリオン"を阻む《妖魔》の使い。
東京の一番大きなイベント会場で何をしでかすつもりなんだろう。
恐らくそこに、黄幡会幹部は終結する。
――羅侯(ラゴウ)は近く降臨する。妖魔を払拭した人間だけが、羅侯(ラゴウ)が築く楽園に行けるの。私達はより多くの人達を楽園に導かないといけない。
今忍んでみても、何も出てこないか。
「しかし、自警団…。黄幡会のしたものなら、見逃しちゃうんだ…。ボク達がこんなの作って置いたら、真っ先に没収されそうだよね。ポスターだって絶対びりびりやぶられちゃう気がする」
"黄幡会"だから、自警団は見逃しているというのなら。
そう、それは今までも僕は感じていたからこそ、自警団の側から、黄幡会のもくろみを切り崩せるかも知れないと…策をたててみたんだ。
蠱毒の薬があるという更正施設に、同時に存在すると僕が予想している、自警団が持つ"個人データ"を収容した巨大サーバ。
そこに不用意に入り込めば反撃を食らうだろう。
その力は未知数で、僕は対抗出来る"0"と"1"を作り出せるとはいえ、限度があるし、むやみやたらに電脳世界を刺激したくないんだ。
この世界だけで…既存の電力だけで、なんとかしたい。
だからこそたてた対策。
「百合絵さんとは…まだ連絡がつかない、か」
由香ちゃんから返して貰った僕の携帯から、まだ百合絵さんには繋がらない。
高電圧の処にいると予想すれば、通信電波にも影響は出てもおかしくないだろう。つまりまだ彼女は、"作業中"なんだ。
電気を通さない特殊な肉体を持つ彼女が、僕の頼んだ仕事を終えて初めて、僕は"行動"に出れる。
東京都全体の電力の放出具合を調べていた調査機。
それを0と1を多く吸収する各塔に取付けて貰い、塔に電力が吸収される直前で、全ての調査機に一斉に電気を通す。
すると調査機同士を結んだ形でバリアのようなものが出来、塔に行き着く前の電力を吸収して、更に巨大な電力となるはずだ。
ただしそれは僅かな時間。
その僅かな時間における力を、補佐にして纏わねばならないような危惧が僕にはあるんだ。
彼女はやり抜けると、僕は信じたい。
――信じられないの?
「由香ちゃん、芹霞達のGPSはどう?」
「ん。ちゃんと動き出して、雑司ヶ谷の墓地の地図で止まってる。地図のブレが補正されたのか、神崎達が墓地に今移動したのか、途中経過がよく判らないね。神崎への電話は…依然繋がらないけれど。別れてから15分ちょい。師匠へのSOS電話も鳴ってない。心配…ないんじゃないか?」
………。
大丈夫…か?
僕が強制的な区切りとして指定した30分はまだだけれど、それを無視して駆け付けなくてもいいか?
――玲くん、あたし達を信じられないの?
………。
目的地にいるのなら、もう少し様子を見ようか。