シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
――たまに、背の高いイケメンが、女子高生と…あの塾の前で話し込んでいるのは見たことはありますけれど。その後は中に入ったかどうかまでは判りません。
そのイケメンというのがこの塾の関係者だとすれば。
特待生に選ばれた者を連れるのは…ここではない、ということか?
ここだと言われた生徒を、どうやって違う場所に連れることが出来る?
サクラの事務員でもいたのか?
何かおかしいと…イマドキの高校生は見抜けないのか?
疑われることなく、連れ出せる者がいた…と?
特待生となるべき…生徒全員を連れ出せた背の高い"イケメン"。
それは誰だ?
どこに連れた?
――そう言えばさ、神崎が襲われたあの塾で、理事長として七瀬の兄貴の肖像画があったって、神崎言ってたよね?
何故…黄幡塾で、周涅の肖像画があったんだ?
芹霞の話によれば、クラス分けの紙が貼られていたすぐ横だったとか。
「皆の目につく…処か」
ならば。
連れだしたのは――。
「周涅だな」
「え?」
「理事長だと顔が知れていれば、直接生徒を連れ出せる」
「はあああ!? だったらなんで師匠は…」
「来れない理由があったんだろう」
もしかしてそれは――。
「皇城家の№2としての…大三位として他に動くことがあったから…かもね」
執拗に高速を追って来た者達が、それに関係しているのだとすれば。
また違う何かを企てている可能性もある。
「あれ……?」
そんな時、奥に続く廊下に紙が一枚落ちていることに気づいた。
……気づいてしまった。
「どうしたんだい、師匠!! 焦った顔をして」
「…僕、見てない。何も見てない!! さあここから出よう」
「は? あ、師匠、あそこに何かが…」
「落ちてない、落ちてなんか…」
「あ……」
由香ちゃんは見てしまったらしい。
「青い紙……」
「見えないよ、僕。気のせいだ。さあ芹霞と早く合流を…」
「師匠……」
「……。由香ちゃん、何も言わないで」
「ボクも言いたくはないんだけれど…言わないと、師匠が大変なことに」
「………」
「師匠、"ほっぺ3倍"になるんじゃないのかい?」
………。
「師匠がいいなら…構わないけど…」
………。
「じゃあ行こうか」
3倍……。
「もう一回、神崎に電話してみよう。あれ…今度は呼び出し音になった!! 繋がるかも……」
芹霞の前で、3倍ほっぺ…。
――あはははは~。
その時だった。
ピーピーピー!!!
芹霞に渡した時計と連動した、僕の携帯から音がしたのは。