シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
一気に顔が強張るのがわかる。
芹霞からのSOSのアラーム音。
芹霞に――…
「芹霞に何か!!? 由香ちゃん行くよ!!」
やはり…30分など区切らず、とっとと戻るべきだったんだ!!
今から何分で芹霞の場所に行ける!!?
今芹霞は何処にいる、雑司ヶ谷か!!?
手にした携帯のGPS画面。
その場所が示したのは――…。
「え!!?」
この近く!!?
それと同時に、
「…はれ? 師匠、電話繋がった!! もしもし、神崎? 君今どうしてるのさ!!」
聞こえてくる由香ちゃんの慌てたような声に、思わず僕はその電話を奪い取ってしまった。
「芹霞、無事か!!?」
『あ、え? ……はあっ、はあっ…玲くん? はあっ、はあっ…玲くんに繋がった!! ……はあっ、はあっ』
………。
芹霞の…声だけど、何だこの荒い呼吸。
最初…また僕達を騙そうとする偽者かと疑う気持ちもあったけれど、聞けば聞く程、僕は芹霞だと確認する。
僕が芹霞の声を間違えるものか。
僕の心はぶれなかった。
これは、正真正銘…僕の芹霞だ。
だとしたら、この息遣いは――…。
「心臓、苦しいの!!?」
『心臓…というより、足の筋肉が…。さすがにフル走行は…いいのいいの、桜ちゃん、頑張る!!』
芹霞は…今どういう状況なんだ?
『あのね、さっきから…はあっはあっ、ずっとふたりに電話してたのに…はあっはあっ、通話中ばかりだったの。もうすぐ、ぐぅぅぅぅ…約束の30分になるし、行き違いになったらどうしようと思ってたら、ぬぉぉぉぉぉ…桜ちゃんが玲くんから言われたSOSボタン……あっ…うっ…押せば気づいて貰えるんじゃないかって。はあ…っ、由香ちゃんと繋がるのなら押さなくても……うぎゃああああ、桜ちゃんストップ、止めてぇぇぇ!!」
………。
「桜、芹霞を襲っているのか!!!?」
まさか、それのSOS!!?
『違う違う、はあっ…桜ちゃんは操られてないし…ん…あたしが勝手に…』
「その襲うじゃなく!!! 何でそんなに"はあはあ"しているんだよ、桜だって、男じゃないか!!!」
思わず声を荒げた僕に、つんつんと由香ちゃんに指で肩をつつかれた。
「ないない。どこぞの発情ワンコじゃあるまいし、しかも真っ昼間に、理性派の葉山は盛らないから。そうであったら、神崎は"止まってぇぇ"と言うはずだから。神崎の"はあはあ"は、むふふじゃないから。甘ったるくないだろう? 師匠にナニかされた時の神崎の声とは、まるで違うだろう?」
………。
「そうか…確かに違うね」
「……ナニかしていることは認めちゃうんだ…」