シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


『はぁっ…ありがとう桜ちゃん。足の筋肉限界突破して、すんごい上り坂超えたと思ったら、ナニまたこんな下り坂。都心部がこんなに山道化してるってナニ!!! ナニが電動自転車よ、全然自動じゃないナニこのポンコツ!! クオン…あ、のびてる。もしもし、玲くん? 聞こえてる? 通じてる?』

「むふ? 何でボクの耳には"ナニ"しか聞こえて来ないんだろう…?」


電動…自転車?


「……あ、うん。聞こえてる…。君は…無事なんだね?」


虚脱気味となり、少々…棒読み口調になってしまったけれど。



無事であればそれでいい。

ちゃんと由香ちゃんの携帯で、芹霞と通話出来たなら。

由香ちゃんの電話…。

………。

通話していないのに通話中だったこととか、やっぱり僕の携帯には着信されないのが悔しいということなんか…そんなの二の次に考えよう。


「よかった…。何事も起きなくて…」

『ウン、ソウダネ』


………。

何だそのカタコト…。


「無事じゃないの!!? 何かあったのか!!?」

『いや…怪我したとかそういうのじゃなく。ん、今は不思議と何もなく』

「"今は"って何!! 前に何かあったのか!!?」

『…ひっ!? さ、桜ちゃん、桜ちゃん…ちょっとお願い。……え、私ですか? 玲様、桜で「桜、端的に現状説明!!」

『は、はい!!』


僕はすぐ何が起きたのかを知りたかった。

それでなくとも、心配でたまらなかったのだから。


『陽斗の墓から自転車で、今…水道橋に入った処です』

「……。もう少し状況説明!! すんなりとは行かなかったのか!!?」

『は、はい。墓に行く前に横槍が入りました』


僕は目を細める。


「横槍とは?」

『凱と…BR001が現われました』


!!!!


「それで、無事なのか!!?」

『あ、はい。戦っていないので』

「は? 撒いたということか?」


『いえ…臨戦態勢には入ったのですが、その時七瀬周涅が現われまして』


周涅…だと!!?


僕は、至近距離で耳をすます由香ちゃんと顔を見合わせた。

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