シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
『何でも、玲様が一緒にいないことにすごく憤慨してまして…』
以前の僕なら、芹霞と共の行動をしていたはずだ。
それを見越し…周涅は、この塾ではない方に赴き、読み違いで憤慨した…とか?
高速で追われたことといい、僕は…皇城に追われていたのか?
いやそんなことより。
「お前…3人の相手をしたのか!!?」
『実は、信じられないことがおきまして』
桜の声は堅く、思わず携帯を持つ手に力が入る。
『凱とBR001が…周涅の相手をして、
私達を逃がしてくれたんです』
「「なんだって!!?」」
僕と由香ちゃんは同時に声を出した。
「桜。僕は以前、凱ともBR001とも戦ったんだぞ? 何で奴らがお前達の手助けをするんだ!!?」
『はい…私も拍子抜けと言いますか…。ただ、凱の渋り口調から、何かの"意思"に動かされているように思えました』
つまりは――。
「誰かの指示で、僕達を…皇城から守れと?」
『……。守る…というより、陽斗の墓に誘導したがっているようにも思えました』
「誘導?」
『はい。そして墓には、こうして移動手段となるものが、不自然に置いていました。性能は…まあ…あれですが』
「……陽斗の墓は、見たのか?」
『……。ありませんでした、付近のものを含めて墓ごと。渋谷で見たような、陥没の出現で、ごっそり地面を抉られた形で』
「「!!!」」
『さらに不可解だったのは…その付近に、五・六匹犬の死骸がありました』
犬……。
それで思い出すのは――
『首に長い鎖をつけたまま、耳から血を流した凄惨な形相です』
七不思議。何か関係あるのだうか。
「その鎖は固定されていたのか?」
『いいえ。投げ捨てられたように地面に。そしてその付近には、直径10cmほどの深い穴がぽこぽことあいていました』
「なんだそれは」
『状況からして、地面に植えていた植物か何かが根こそぎとられていたような…そんな感じです』
植物…?
確かにあそこは、色取り取りの花や雑草などが生い茂っていたようには記憶しているけれど。
しかし…墓場でそんなものを取るか?