シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「匡に宛てられた女は…従妹。私と恋仲だった。匡の婚約者となった時、私は紫堂の権威を全て放棄する代わりに、匡から愛する美由紀を貰った。そして出来た子供が…久涅だ」
それが…愛のある、あのビデオ。
「久涅は…遺伝子異常で生まれた」
異常…?
「遺伝子に異常がある我が子久涅を生かす為には、そのERROR遺伝子を修復する以外に手はなかった。しかしそれは難解すぎた。元々紫堂の遺伝子は、普通人のものとは違うからな。
私は久涅を助ける為に、狂ったように色々な策を講じに、走り回った。そして出た結論は…久涅の遺伝子を改竄できないのなら、他に"転写"すればいい。そう…それはお前が潰した藤姫のように」
「藤姫と同じように…肉体を変えようとしたのか」
「しかしうまくいかなかった。受け皿があまりにも脆すぎて。我々紫堂において、より色濃く生まれた子供は、より強い力を親から受け継いで生まれてくる場合が多い。そこに目をつけた。久涅を生かすために、スペアとなるべき強い器が必要だった。それがお前だ」
「何故俺だ? 第二子を作ればよかったじゃないか。より近しい遺伝子を持つはずだ」
「遺伝子異常を引きおこした原因が私の可能性があった。私の…電気の力、"0"と"1"が遺伝子構成に悪影響を及ぼしている可能性が。遺伝子だけではなく、肉体的欠陥を持つ子供が生まれる可能性も高かった」
「0と1って…お前も玲と同じ力があるのか」
煌が驚いた声を出した。
「ああ。玲程ではないがね」
それでもこの設備を見る限り、この男の力が玲程ではないとしても、玲が優れすぎていると考えれば、この男の力は未知数だ。
今はまだ――。
「遺伝子に異常を引きおこしたのが、"電気"に関係しているのだとしたら、玲の存在はスペアには難しい。直接的に私の血を引かず、私以上の力を持つ男の子供が必要。その為に、弟が…弟の子供が最適だった。だが弟には、想い人はいるらしかったが未婚だった。当然、子供はいない」
玲と似た顔の男は、淡々と続ける。
「私は待っていられなかった。時間を浪費しすぎていたんだ。早く子供が欲しかった。弟に相談したら、2つ条件を突きつけられた。1つは、形式的に紫堂が取り決めた女と結婚すること。そしてもう1つは、弟が子を孕ます"行為"を私が見ているということ」
「……!!」
我が父親ながら…何と言う…。