いじめのその先
「じゃあ皆、準備は良い?」
沙羅ちゃんの掛け声と共に、クラス全員立ち上がった。
訳が分からない私を置いて、一つの席に集まった。私の前の席、飯田さんの席だ。
「…?」
静まりかえった教室を打ち消したのは、『佐々木 怜(ささき れい)』君の声だった。
「お前さ、本当うざいわ」
「!」
人の隙間から見えたのは、サイダーを飯田さんの頭にかけている佐々木君の姿だった。
ある人は「止めなよ」と言い
またある人は「もっとかけろ」と言う
しかし誰もが皆、笑っていた。
飯田さんは顔色一つ変えず、鞄から取り出したハンカチで拭いていた。
それはまるで、いつもの当たり前のような光景が広がっている様だった。
「………」
声に出せない気持ちを私は思っていた。
あの時と同じ様な感じ。
半年前と同じ様な感覚。