いじめのその先
食事を終えてそろそろ出ようと立ち上がった時、目の前の海に知った顔があった。
…あれって…結衣に琥珀?それに前の学校の…
「千南ちゃん…?」
「え?」
動きが止まっていた私を心配そうに幸恵ちゃんが見ている。前を見ると他のみんなもどうした?と言う顔で見ていた。
「どうかしたの?」
「いや…何でもない!!」
目一杯の笑顔で顔を向け、早く行こうとみんなを急かした。私の胸に残ってるドキドキは消えないまま…。
ガラス工房の場所はランチした所から程近い場所にあった。
中に入り、さっそく体験をし始めた。お客さんは私達の他にカップルが一組と、違うクラスの生徒が一組居た。
みんなそれぞれ好きなものを作り始め…とは言っても私達が作れるのはせいぜいグラスか、小さな花瓶ぐらい。私と幸恵ちゃん、月島君は花瓶を。飯田さん、佐々木君、立川君はグラスを作ることにした。
意外と熱が強くて火傷しないように気をつけながら、ガラスを溶かしていく。
30分ぐらいした時、右から声が上がった。
「出来た♪」
「俺も~!!」
「なかなかかな♪」
よし!!私も出来た花瓶を見て一息ついた。こんなもんかな…とふいに横を見ると、私とは比べものにならないぐらいの小さいけど立派なグラスがあった。
綺麗だし可愛いし…すごい!!
「わぁ~素敵だね!!飯田さんこうゆうの得意なの?」
作った本人、飯田さんに声をかけてみた。
すると無表情の真顔のまま返事が来た。
「得意って程じゃない。前に少しやったことがあるだけ。」
「あ、そうなんだ~。でもすごいよ♪一つの作品みたい!!」
「お、本当だな!」
いつの間にか周りにみんなが集まっていた。
普段は人のことを褒めなさそうな佐々木君でさえ、咲枝やるじゃん!!なんて言ってる。
中心に居る飯田さんは、無表情ながらなんだか嬉しそうに見えた。
このまま平和だったら良いな…私は心で小さく願った。