いじめのその先
「咲枝はいつもあんなだよ。…そんなことより、千南ちゃんも下で呼びなよ~とくに男子♪」
「え?」
唐突に言われて何か分からなかったが、すぐに名前だと気付いた。
そういえば男女関係なく、みんな名前で呼んでたような…。でも中学生で珍しいよね。
私の考えを読んだのか、ふいに幸恵ちゃんが口に出した。
「私達のクラスは一年の時からそうなの♪男女関係なく仲が良くて…いつの日かみんなが名前で呼んで、今に至ってるの♪」
「そうなんだ~。」
なんか前の私のクラスと似てるな…。
「本当は双子が居るから、見分けが付くように呼んだのが初めなんだけど。」
「え?」
小さな声で幸恵ちゃんが言葉を付け足したが、私の耳にはすごく印象に残った。
「双子…?」
ふいに声に出してたのか、前を歩いていた佐々木君達が怖い顔で振り向き幸恵ちゃんに近づいた。
「幸恵、お前そいつに何話した?」
「あ…別に。」
「じゃあお前。何で今、双子って言った?」
今後は私に聞いてきた。もしかして、聞いちゃいけないことだったのかな…。みんなの雰囲気から察した私はごまかすように、嘘をついた。
「ニュースだよ。前にアメリカで犬の双子が生まれたっていう話をしてたの。ね、幸恵ちゃん?」
「う、うん。」
私は笑顔でみんなに説明した。勘がするどそうな月島君が納得するか心配だったが意外にもあっさり納得したようだった。
再び歩き出した一行の目の前には、キラキラ光る海が見えた。
明らか元気がなくなった幸恵ちゃんを心配そうに横目で見ながら、私の目は海に奪われていた。