いじめのその先

しばらく久しぶりに話した後、誰かが静かに口を開いた。

「千南…ごめんね。」

「…え?」

「私、あの時のことずっと謝りたくて…。でも引っ越し先も知らないし、音信不通になるしでずっと心に残ってて。」

それに連れられる様にそれぞれ私に向かって謝って来た。私は一瞬迷ってしまった。ゆきの件は理由があるにしろみんな悪い。

だけど私自身…私の存在がゆきを苦しめた。
本当は嫌だけど…何故か口から自然と言葉が出て来てしまった。

「全然良いよ!!私だって悪いとこあったし、気にしないで♪」

私は改めて自分の性格が嫌だと思った。でも自然と笑ってしまった。悲しい心を隠すように。
私の笑顔と言葉に安心したのか、みんな真剣な表情からいつもの表情に戻った。

しかし次の言葉でまた私の心は苦しむことになる。

「そうだ!!千南、琥珀や結衣と仲良かったよね!?呼ぼうか?」

「…あ~琥珀と結衣?」

「そう♪近くに居ると思うし…久しぶりに話したいよね?」

「えっと…」

正直二人には会いたくない。別に嫌いなわけではないが、あの一件があってから一緒に行動してないし何より気まずい。
二人はゆきや私のことどう思ってるのか、聞きたいけど怖い…。

「千南…?」

駄目だ…笑わなきゃ…でも、泣きそう…。

「悪いけど…俺達時間決まってて、そろそろ行かなきゃだから。」

「あ、そうなんっすか。」
「ごめんね、千南。またね~♪」
「メールしてね!!」

月島君の言葉でみんなは帰って行き、私は手を軽く握られ、砂浜を引きずるように歩き出した。

「あ…りがとう。」

涙声で小さく言うと、不機嫌そうに呟かれた。

「質問…出来なかったじゃねぇか。」

「ごめ…」
「星也~千南ちゃん!!何してんの?」

謝ろうとした時、海に入って遊んでいる幸恵ちゃんから声がかかった。ハッとして顔を上げると手を離され、代わりに急に腕を引っ張られた。

「え…」

海の近くまで来るといきなり、私の腕ごと海へとほうり投げられた。

「ひゃあ!!」

『ざばーん』

案の定私は海の中に服ごと入る形になり、びしょびしょになってしまった。

「ちょっと星也~何やってんの!?千南ちゃん、大丈夫?」

「あ…うん。」

月島君は無言で私に向かって助けの手を差し出した。その時、耳元である言葉が囁かれた。

「涙…引っ込んだ?」

「あ…」

そのためにわざと海に…。思わずその不器用な優しさに、私は微笑んだ。

「今度は星也の番だ~!!」

「あ?何が…」

月島君の言葉も聞かず、立川君と佐々木君が月島君に向かってダイブした。大きな音と波を立てて三人は私と同じ状態になった。三人の姿を見た私と幸恵ちゃんは同時に笑い出した。
そんな私達を見てなのか、怒った月島君は私達女の子に目一杯の水をかけ始めた。

どのくらい遊んだのだろう…時間を見て、そろそろ切り上げようとことで新しい服に着替え、私達は海を後にした。

旅館に帰る途中、私は今日の出来事を思い出していた。嫌なこともあったけど、みんなと過ごしてとっても楽しい。
しかし、そんな思いは長くは続かなかった。


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