いじめのその先
「うっ…けほっ…けほっ…」
気付いた時にはどこかへ横になっていた。横を見ると幸恵ちゃんが心配そうな顔をしていた。周りを見渡すと若松先生や佐々木君、クラスのみんなも揃っていた。
「千南ちゃん!!良かった~目覚ましたのね♪」
「えっと…ここ…」
「公園のベンチだよ。」
「あ…私…」
幸恵ちゃんにそう言われて、記憶を辿ろうとした時、月島君の怒りの声が聞こえた。
「何であんなことした?」
「えっと…」
言葉に詰まり彼を見ると、洋服が少し濡れていた。もしかして月島君が助けてくれたのかな…?私はそんなことを思いながら、先程の出来事を思い返してみる。
あの時は咲枝ちゃんを助けたい一心だった。そうかすかに思ったら今度は先生の声が聞こえた。
「相原さん。何で湖なんかに落ちたの?」
「うぅ…えっとー」
状況を知らなそうな様子で聞いてきた。私は少し考えたが、苦笑いを浮かべて次のように答えた。
「湖にストラップ落としてしまって…取ろうとしたら落ちちゃったんです。」
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「……お前、百パー馬鹿だよな。」
「…素直に本当のこと言った方が良かった?」
「別に。」
今私は、ベンチに座って隣に立ってる月島君をはじめとするみんなと話していた。
先生にはクラス委員を含める数人が付いてるということで、この場を任せてもらえた。
「智一や幸恵がこいつに色々話したのか?」
「う…」
「何も聞いてないよ。」
立川君の返事を遮るように言葉を発した。
「私は貴方達の事情も、具体的なことは何も知らない。」
「…っ……」
月島君は何か言おうとしたがそのまま口を閉じてしまった。やがてゆっくりと低い声で呟いた。
「お前が邪魔しようが俺らにはたいした問題じゃない。」
そう言うと佐々木君達と一緒に、足早に行ってしまった。
「…あの…千南ちゃん…私達…」
幸恵ちゃんがとぎれとぎれに、言葉を出している。
「大丈夫だから気にしないで♪」
私は幸恵ちゃんの気持ちが分かり、にっこり笑って見せた。
「これ着ろよ。いくらタオルで拭いても、体温が奪われてる。」
心配そうに少し照れながら、立川君は自分の上着を差し出した。私は少し考えやんわりと断った。
「ありがとう。でも大丈夫!!色んな意味で頭冷えたからさ♪」
「…分かった。じゃあ、寒かったらいつでも貸すからな♪」
明るく言った私に、立川君は微笑んで返事をした。
その後少し遊んでから、予定通りの時間で旅館に帰って行った。