いじめのその先
放課後、私は幸恵ちゃん、立川君と一緒にさっそく空也君の入院している病院を訪れた。
病室の中に入ると、月島君に瓜二つの顔があった。
彼は私達に気付くと微笑んだ。
「幸恵に智一。珍しい、どうしたの?…そっちの子は?」
「私、相原千南です。前に2年A組に転校してきて…。」
「転校生?じゃあ初だね♪初めまして、月島空也です。僕の双子の兄、星也のことは知ってるよね?」
「あ、はい。」
そう答えると、少し笑った。
「敬語じゃなくて良いのに~。タメでしょ?」
言われて私は気付いた。
私敬語だった…?
軽く息を吸い込み、再び私は口を開いた。本題に入るように…。
「ここへ来たのは聞きたいことがあって。」
「聞きたいこと?」
彼は相変わらずの柔らかい笑みで聞き返した。
「そう。あの時の海で何があったの?」
唐突に言われて、一瞬彼の目が泳いだ。
「何って…言ったはずだよ?自分で落ちたって。」
曇りのない笑顔で返されたが、ここは引くわけにはいかない。そう思った私はさらに言葉を続けた。
「でも咲枝ちゃんは…自分が落としたって言ったんだよ。」
「違う!!」
ここに来て初めて彼は表情が変わった。まるで全てを否定するようなそんな顔に…。
「咲枝は悪くない…あれは僕が自分で落ちたんだ。」
「空也君…。お願いだから本当のこと言って。じゃないと…咲枝ちゃんがもっと傷付くことになるの。」
「えっと…どうゆうこと?」
やっぱり空也君は知らないんだ。咲枝ちゃんがクラスでどうゆう風になってるか。
「今、咲枝ちゃんはクラスでいじめられてる。」
「え…」
「だから、空也君が本当のこと言わないと咲枝ちゃんはもっと…」
「ーめ」
「え?」
「駄目っ…今すぐ止めさせて!」
突然態度が変わった空也君に、私はただ呆然とするだけだった。